「おめでとう、リーシャ。ようやく貴女にも婚約者が出来たのよ」


 家族揃っての夕食会、五つ置いてある席は全て埋まっていた。中心に値する位置へと鎮座するのは家族の大黒柱であり、スウェイルという小国の大黒柱である国王その人。その隣に座るのは国王の妻であり、この国の女王。
 おめでとう、とにこやかに告げる女王の視線は末席に座る娘へと向けられていた。その後を追うように、驚いた様に目を見開いて視線を向けるのがこの国の王子達。


 家族の視線を一身に受けている王女の名はリーシャ・フォンベルン・スウェイルという。
 感情を表情に中々出さないからか、それとも良く森に入り浸っているのが噂になっているのか、王女という立場にありながら“魔女”という綽名で近隣諸国には噂される。
 その噂もあいまって、小国の王女であるリーシャへと求婚をしてくる他国の王子達は今までゼロだった。


 求婚者ゼロという不名誉な記録の更新を阻止した人物が居ると女王がにこやかに告げた翌日には、どうやって情報を得たのか国民達の誰もが知ることとなる。