私は強引に橘くんを連れ、一緒に学校を出た。
「つかれたぁ〜!」
慣れない事をしたから今日はちょっと疲れちゃった…

橘くんは全然相手してくれないし、てか!
一緒に学校出たのにもう先に行ってるし…!

「ねぇ!橘くん!置いて行かないで!」
そう言って先に歩き出している律の元に小走りで向かう
そんな声に気がついたのか律は足を止め振り返る

「なんで私の事、置いていくのよ!」
『なんでって、君が遅かったから。』

玲奈が追いつくとそのまま律の手を引いて走り出す
『うぇ、なに急に』
「"君"じゃなくて"玲奈"ね?」
いきなりのことで律がポカーンとしているとそれを察したのか玲奈が口を開く

「私のことは玲奈って呼んで?"君"って呼ばれるのなんか嫌だし、ね?」
『あぁ、そういうこと…じゃあ、』

『玲奈?』

そう橘くんに私の名前を呼ばれるとドキッとしてしまう
どうして?今まで他の人に名前呼ばれても何ともなかったのに…
でも、なんだかんだ橘くんと話してると楽しいのよね、それこそ無愛想ではあるけど、
ちゃんと話は聞いてくれてるって言うか、
そんなことを考えていると前から声がする。

[お姉さん可愛いっすね〜]

ハッとして目の前を見るとチャラそうなお兄さんが話しかけてきたので橘くんと足を止める。
[良かったら俺とLINE交換しない?]
「え?あ、」
な、ナンパ?学校の外で話しかけられるのは始めてだ…断らないと、
「む、無理です。ごめんなさい」
そう断り逃げようとすると、それが気に入らなかったのかお兄さんが
[はぁ?お前みたいなブスに話しかけてあげてるんだからLINEぐらい交換しろや]
と、逆ギレしてくる。
それを無視し、とりあえず逃げようとするとお兄さんがしつこく私に罵倒してくる挙句の果てに私に手を上げようとしてきた、
嫌ッ…
そう思い顔を背け目をギュッと瞑ると、

────…パァンッ
という音が鳴り響いた。
目を開くと橘くんが殴りかかろうとするその手を止めてくれていた。
『おい、今何しようとした?』
橘くんの低い声にドキッとする。
なんだか、いつもより声が低い気がするし…

お兄さんは[…ッチ]と舌打ちをし、不機嫌そうに、どこかに行ってしまった…

橘くんは、安堵したように胸をなで下ろした。
『大丈夫か?』
そう心配そうに優しく声をかけてくれる。
その姿に私は再び胸が熱くなった。

私は笑顔になり感謝する
「うん!大丈夫!」

ただ、少し気になる、なんで助けてくれたんだ?いつもなら私が学校で告白されてる時は基本的にスルーなのに…まぁ、殴られそうになったから、助けてくれたのか。
でも、まぁ一応聞いておこう。
「でもさ、なんで助けてくれたの?」
そんなこと聞かれると思わなかったのだろう…
橘くんは首を傾げて悩む
『なんでって、殴られそうな人をほっとくやつなんて居る?』
と、橘くんらしくない回答に私は思わず笑ってしまった。
「何それ〜?変なの。」

…私は知っている。
この前、橘くんのクラスで男子同士の殴り合い喧嘩があったらしいが、橘くんは一切気にも止めず、スマホでゲームをしていたそう。

そこまで人に興味が無いのになんで私の時は助けてくれたんだろう?

まぁ、でも。ありがとう、橘くん。