ひまりちゃんにせがまれて、私たちは3人で遊園地に行くことになった。
「お兄ちゃん、ちゅあちゃんと手、繋いでる？ はぐれないように、だよ！」
ひまりちゃんの言葉に、朝陽先輩は照れくさそうにしながら、私の手を優しく握ってくれた。

彼の大きな手と、私の小さな手がぴったりと合わさる。
「んー…やっぱり小さいな、おちびさんの手は」
そう言って、彼は意地悪く私の手をギュッと握りしめた。
「もう、からかわないでください！」
私は頬を膨らませて反論したけれど、彼の温かさに、私の心はドキドキと音を立てる。

まず向かったのは、ひまりちゃんが一番楽しみにしていたジェットコースターだ。
私は絶叫系は普通に楽しめるタイプだけど、朝陽先輩は顔が青ざめている。
「お兄ちゃん、大丈夫？ 頑張ってー！」
ひまりちゃんに背中を押され、朝陽先輩は震える手で安全バーを握りしめた。

一番高いところまで来たとき、朝陽先輩は絶叫した。
「ちゅああああ！ 助けてえええ！」
彼の悲鳴に、私は笑ってしまった。
でも、彼の弱々しい姿を見ていると、なんだかすごく可愛く見えた。
ジェットコースターを降りると、朝陽先輩は足がガクガクで、地面にへたり込んだ。
「生徒会長なのに、絶叫系苦手なんですね」
そう言うと、彼は「うるさい」とふてくされたように言った。

その帰り道、ひまりちゃんと楽しそうに話しながら歩いていると、周りの視線が気になった。
その中の一人が、クスクスと笑いながら言った。
「ねえ、見てよ。中学生と小学生がデートしてる。しかも、男の子、イケメンじゃん」

その言葉に、私の心臓がギュッと締め付けられた。
小学生と間違われること。それが、私の最大のコンプレックスだ。
顔が熱くなり、朝陽先輩とひまりちゃんから、少し距離を取ろうとした。

その時、朝陽先輩が、私の手をもう一度強く握り直した。
そして、周りの人たちに聞こえるように、はっきりと、でも優しい声で言った。
「彼女は、僕にとって世界で一番可愛い女の子なんだ。それに、おちびだって、僕が隣にいれば、誰も何も言えないだろ？」
彼はそう言って、にひっと笑った。

その言葉に、私は顔を上げて、朝陽先輩を見た。
彼は、真っすぐな瞳で私を見て、優しく微笑んでいた。
周りの人たちは、何も言えずに立ち去っていく。

私は、さっきまでの恥ずかしさや悲しさが、一気に消え去っていくのを感じた。
「お兄ちゃん、かっこいい！」
ひまりちゃんも嬉しそうに朝陽先輩に抱きついた。

その瞬間、私の心に、一つの決意が生まれた。
もう、身長のことで悩むのはやめよう。
朝陽先輩は、こんなにも私のことを大切に思ってくれている。
それに、私には、こんなにも素敵な味方が二人もいるんだから。