「あの男、今日も私を『ちび』って呼んだんだから!」

蒼陽学園、中等部の廊下に響く私の声に、親友のユイが苦笑いした。
「また、生徒会長の朝陽先輩?」
「そうだよ! 聞いてよ、ユイ! 私が体育館倉庫の高いところにあるバスケットボールのネットを取ろうとしてたらさ、あいつがヒョイって来て、わざとらしく『おー、おチビちゃんは手が届かないのか』って!」

身長149cm。小学生と間違えられることも多いのが、私のコンプレックス。それを、学園一のイケメン生徒会長、瀬名朝陽は毎日のようにからかってくる。みんなの前では氷の王子様みたいに振る舞うくせに、私にだけはなぜか、塩対応どころか、からかってくるのだ。

「もう! 私だって、生徒会長に負けないくらい、心は『つよつよ』なんだから!」

そう、私の心はガラスなんかじゃない。
いつだって、朝陽先輩のからかいを真っ向から受け止めて、言い返してやる。

だけど、私にもわからないことがある。
先輩は、どうして私にだけ、こんな風に絡んでくるんだろう?