ゆ「ゲーム、完成したよ!」
「最短でいつ会える?」
画面から高揚感が伝わって、嬉しくなる。
ユ「今、塾から出たところだけど、来れる?」
送ると、即座に返事が来て、すぐに見せたいという気持ちが伝わってくる。
ゆ「すぐに行くよ」
ユ「OK 待ってる」
靄がかかったように淡く光る街灯。
風が応援するかのように吹いて、ゆうやは現れた。
「速いね。こんなに寒い季節なのに、凄く暑そうw」
はにかんで笑う。
純粋に嬉しそうな顔に、私まで嬉しくなる。
「完成したから、早く見せたくて」
「そうだね。じゃあ、早速行こうか」
夜の澄んだ冷たい空気を吸い込んで、白い息を吐く。
「でも、長くいられるところがいいし、どこかあるかな」
「前のレストランは、さすがに申し訳ないよね」
「俺の家、行っても多分問題ないと思う」
小さく手を挙げて、恐る恐る言う。
「じゃあ、そうしようか。一応、親にラインしといてね」
スマホを慣れない様子で人差し指で丁寧にタップしていく。
「ラインしたよ」
「じゃあ、行こうか」
夜の静かな空気が私たちを覆っていく。
私達の自由を乱すものはもう何もない。
「遅い時間にすみません。お邪魔します」
戸を開けて、家の中に入る。
「先日はごめんなさいね。いいおもてなしはできないけど、ゆっくりしてってね」
「いえ。ありがとうございます」
「わざわざパソコン持ってきた意味無くなっちゃったね」
笑って、ゆうやの隣に座り込む。
大きめのパソコンが机にセッティングされていて、その隣にレストランの時にも使ったタブレットが置かれている。
少し小汚いこ雰囲気ではあるものの、ゲーム機器が揃っていて、ゆうやらしい部屋。
「早速、ゲーム見せてよ」
「うん」
リュックからパソコンを取り出して開き、マウスを叩かれて、画面が切り替わっていく。
「エンターキー押したら、始まるよ」
小刻みに震える手で、ゆうやがエンターキーを押した。
画面が暗転して、重厚なBGMが流れ始める。
まるで映画の予告編のような緊張感に、心臓が飛び跳ねる。
Playボタンを押して、キャラクターが現れた。
その瞬間、息を呑んだ。
滑らかな動き、細かく作り込まれた背景。
「凄いじゃん。これヤバいって」
言葉にするよりも先に胸が熱くなる。
隣で笑う湯谷の顔が誇らしげで、少し照れていて、でも確かに輝いている。
「ね、ゆうや。これ、応募してみない?」
学校で配られたコンテストのチラシを手渡す。
「ストーリー性重視で、AIイラストOKって書いてあるし、面白そうじゃない?」
チラシを熱心に見て、「これ、育成ゲームの製作者が主催だ」と子供みたいに無邪気に笑った顔で目を輝かせる。
「やってみる?」
「うん。やってみたい」
「じゃあ、このコンテストについて詳しく調べてみようか」
スマホを取り出して、「第13回中学生ゲームコンテスト」と検索をかける。
「紹介動画が必要みたい」
「せっかく応募するんだったら、最大限魅力伝えたいよね」
「魅力伝えるの得意だよ」
ニヒルな笑いを浮かべる。
「生徒会長って、そういう機会結構あるのか」
「あるよ。絶対正しくないだろってものを適当に利点だけをうまくいって、拍手貰ったこともあるからね」
胸を張って笑うと、「大変そう」としょげた顔。
「でも、このゲームは絶対いいものだから、本気でやるよ」
と笑い掛けた。
ゆうやのゲームに賭けた気持ちを人に伝えたい。
絶対に成功へと結びつかせたい。
ゆうやの努力が報われる瞬間を、この目で見届けたい。
そして、誰よりも誇らしくその背中を押してやりたい。



