製作途中。

雨音のループが不自然に聞こえる。

風のエフェクトが強すぎて、画面の雰囲気を壊してしまう。

キャラクターの表情が、官女の変化に追いついていない。

何度も再生と修正を繰り返す。

セリフの表示タイミングを1秒ずらすだけで印象がぐっと変わっていく。

背景の色身を少しずつ暗くすることで、沈黙の重みが増す。

微調整の積み重ねが、物語の深度を少しずつ深めていく。

時には、何度も同じシーンを再生し、違和感のある動きや音を見つけては修正していく。

「この沈黙の後に、ほんの少しだけ風の音が入るといいかもしれない」

そんな直感を頼りに、音のタイミングを0.3秒だけずらしてみる。

すると、画面の空気が変わった。

「これだ」

小さく呟いて、満足そうに頷く。

その夜、完成したシーンを何度も眺めながら、ユズの反応に想いを馳せた。