「ゆうや。ここ、こっちの文の方がよくない?」

 タブレットの中の文字を指さす。


 今日はゆうやの家で、ゲーム制作の手伝い。

 主人公やナレーションのセリフの確認、音楽の演出などについて話し合っていく。

 昼下がりの柔らかな光が、カーテン越しに部屋の中へ差し込んでいた。

 カーテンの模様が床に淡く映り、部屋全体が穏やかな空気に包まれている。

 机の上には、ノートパソコン、メモ帳、飲みかけのコーヒー、ゆうやのお母さんが持ってきてくれたチョコや組などのお菓子が散らばっている。


「うーん。確かにこっちの方が、感情が伝わりやすいかも」

 悠夜は少し考えてから、キーボードに手を伸ばして打ち換えていく。

「こっちに差し替えて、BGMのタイミングもずらしたほうがいいかな」

「そうだね。セリフの余韻が残るようにしたいし」

 画面を見つめながら、細かい調整を重ねていく。

 プレイヤーの心に響く、一シーンに仕上げたいという思いを胸に。


「このセリフ、もう少し間を取った方がいいかも。プレイヤーが感情を受け止める時間が必要だと思う」

「なるほど。じゃあ、ここで一瞬止めて、静寂を挟もうか」

「いいね、それ。緊張感高まるし、印象に残ると思う」

 何度も再生と停止を繰り返して、最適なタイミングを探っていく。

 外では風が木々を揺らし、葉のざわめきがかすかに聞こえ、その音がゲームの世界と現実を繋ぐように感じられた。

「ねえ、ゆうや。このシーンにちょっとした回想を入れるのどうかな」

「回想か、いいかも。キャラクターの背景も深まるし、プレイヤーの共感も得られると思う」

「じゃあ、書いてみるね」

 メモ帳を手に取って、ペンを走らせる。

 ペン先が紙を滑る音が、部屋の静けさの中に心地よく響く。


 楽しさがキャンバスのように彩られ、想像が増していく。

 ジグソーパズルのように、流れるように形成されていくゲーム画面に様々な景色に心が躍っていく。