少し苦めの味。

 ユズは大人なんだなって思った。

 俺の知らないことをたくさん知っていて、こんなに人が集まっているところに一人で行ける勇気がある。


「映画、行こうかな」

「ん。じゃあ、お金払っとくから、店の前で持ってていいよ」

「いや。悪いよ。僕も払うよ」

「いいよいいよ。私が連れてきたし、ポイントカードあるからさ」

「でも、自分の分のお金は出すよ」

 机の上に百円玉と十円玉を少し置いた。

「そう言うなら、ありがたく使わせてもらうけど」

 ゆうやは、お会計を私の後ろで眺め、私はトレイの上にそのお金を置いて、支払った。

「人と来るの珍しいですね」

 顔見知りの店員さんがお金を受け取りながら話す。

「ゲームで知り合って」

「そうなんですか。いろいろな出会い方があるんですね」

 ペコっと小さくお辞儀をする彼は、緊張した面持ちを浮かべながら、恥ずかしそうに笑った。