「ゆうや。大丈夫?」

ショッピングセンターの端で、縮こまっているゆうやに声をかけた。

前に会った時は夜だったから、まだマシだったけど、確かにここは人が多かったかな。

「一回、場所移る?」

「いや、大丈夫」

真っ青な顔で、しおれたように頑なに拒否をする。


「なら、あそこ行こう」


「あの。すみません。2名、入れますか?」

奥のキッチンで作業をしている店員の方に声をかけ、席を案内してもらう。

「ここ座って。さっきのとこよりは静かだし、大丈夫だよ」

自分が座った隣を叩いて、ゆうやが座ることを促す。

「メニューどれがいい?」

「ごめん。何でもいい」

「そっか。じゃあ、アイスコーヒー2つください」

ここのアイスコーヒーは、深みとほんのりの甘さがあっておいしいから、少しでも心が落ち着けばと思って、自分のお気に入りを選んでみた。

「どうぞ」

コースターの上に丁寧に滴がついたカップが置かれた。

「ありがとうございます」と言い、カップに口をつける。

やっぱり、心が落ち着く味だ。

「ほら、美味しいよ。ゆうやも飲んでみてよ」

「うん」

弱気に頷いて、グラスに口をつけた。

「苦っ」

渋い顔をして、口をへの字に曲げる。

「え、美味しいじゃん。お子様だな」

「コーヒーなんて、飲まないもん。ユズはコーヒー飲むの?」

「コーヒーは徹夜の相棒だからね。眠いときとか結構飲むし、味としても好きだよ。ゆうやはゲームで徹夜してるときに飲んだりはしないの?」

「しない。昼夜逆転してるし、眠い中やるのがいいんじゃん」

「それは分からん。頭しゃっきりしてた方が気持ちいいじゃん」

けらけらと笑って、彼の顔色も少しずつ戻ってきた。


「ユズはここよく来るの?」

「この、カフェ?」

「カフェもだけど、このショッピングセンター」

「まあまあ来るかな」

「塾の帰りに丁度いいし、友達と遊びに来ることもあるよ」

「そうなんだ」


「もう少しゆっくりしててもいい?」

「いいよ。まだ時間はたっぷりあるからね」

アイスコーヒーをゆったりと飲みながら、流れていく人を横目にくつろぐ。