同級生と話すユズは、とても遠かった。

 教室のざわめきの中で、ユズの声だけが遠く響いてくるように感じた。

「この学校、勉強面では確かに整っていて、サポートも手厚い。そして、進学実績も悪くない。思った通りの印象で、僕はここがいいかなって思っているんだけど、白川さんはどう思った?」

「そうだね。取り組みがしっかりしていて魅力的な学校だと思うよ。だけど、私はもう少し他の高校も見ておきたいかな」

 相手の感情の深い部分に触れないように話す。

 まるで壁を作っているかのような距離感。

 俺の悩みにずけずけと入り込んできたユズとは真逆で、ユズではない別人として捉えてしまう。

 ユズの全てを知っているわけではないけれど、なんだかすごく遠くに行ってしまったような気がして、胸が締め付けられた。

 優等生ぶっている、現実から逃げたくなるというのは、全ての人が何かを隠しながら生活している感じが苦しいということなのだろうか。

 誰もが、傷つきたくないから重要なところは隠す。

 だけど、それによって、人への怖さを感じてしまう。

「そっか。なるほどな」

 ユズの同級生の呟きが響いて、解散する運びとなった。

 その場を同級生が立ち去った後、ユズは急いで僕のところへ駆けてきた。

「ごめん。ちょっと同級生がいたから」

 同級生に会いたくないという僕を気遣って、会わせないようにしてくれたんだなという感謝が募りながら、それでも寂しさを感じてしまった。

 だけど、これがユズの自己防衛なら、立ち向かわない俺に否定する権利はない。

「やっぱり、学校の私は違和感?」

「え。まあ、そうだね。なんというか、定型文」

 ユズは、大げさに笑って見せた。

「言うねえ。でも、そうだね。いつも同じようなことしか言ってないかも」

 ユズの笑顔に少しだけ救われた。

 立ち向かわない俺に否定する権利はない。

 だけど、飾らない彼女の方がずっと心地よく感じられた。