桜が咲く時まで、生きていたい

その後少しして宗一郎は着替えに行った。姫奈も教室に戻り、教室を見回す。

すると、にわかに廊下が騒がしくなった。

「イケメン…!」

「可愛すぎるだろ…」

宗一郎含め我がクラスの接客係たちが着替えて戻ってきたのだ。

全員が衣装を着ているのを見るのは今日が初めてなのだが、やはり個人の魅力を引き出せるような衣装を作り

上げているのもあり、破壊力が強い。

我がクラスの接客部隊だけで文化祭が盛り上がるだろう。別の意味で。

「さすが、私たちが手塩にかけて作った衣装…!」

そう言って衣装係たちは喜んでいる。

「かっこいい…」

思わず姫奈も口にだしてしまっていた。

思わず見惚れてしまっていると、突然宗一郎がこちらに振り向いた。

スタスタと歩いて来る。

「衣装、ありがとな」

立っているだけで目を引く宗一郎はみんなの視線を一気に集めている。

しばらく見惚れていた他のクラスメイトたちが、騒ぎ出す。

「え!?特定の女子とは親しくしなかった宗一郎くんが…!?」

「いや、まだ衣装のお礼言っただけじゃん…!そうと決まったわけじゃ…」

外野のことなど気にしない宗一郎はそのまま姫奈に話しかける。

「なぁ、俺のシフト11時までなんだけど、それ終わったら一緒に回りたい」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。

「え、う、うん」

戸惑いつつそう答えると、宗一郎は満足そうに春樹くんたちの方へ戻って行った。

「「「えぇぇぇぇ!?!?」」」

クラス中から、いや正しくは廊下からも、驚きの声が聞こえた。

「え、ちょ、どーゆーこと!?てか、え!?」

「我らが王子が…」

廊下からはファンクラブの子達も聞こえてくる。

「これから私たちはどうしたら…」

「いや、でももし本当に付き合っていたとして、それが宗一郎様の好いた方なら、私たちは応援すべきだと思います」

「確かに…姫奈さんはこれから姫奈様とお呼びしなければ!みんなであのお二人をお守りしましょう!」

という謎の団結も生まれていたりした。

一方その場に居合わせた男子メンバーたちはというと、

「宗一郎…まじかよ!?俺姫ちゃん狙ってたのに!」

「まさか俺たちの癒しをお前が奪うなんて…」

「このことは姫奈様見守り隊の隊長にお伝えしなければ…!」

などとさまざまだった。