そして手直しも順調に進み、あと一人で最後!というところで放課になってしまった。

どうしようかと悩んでいると、宗一郎の方から話しかけてきてくれた。

「姫、放課後でもいいよ」

「ほんと!?手直しは今日終わらせたかったから、助かる!」

そう、姫奈はフロアマネジメントも依頼されていたので、なんとしてでも今日衣装を作り終えたかったのだ。

早速試着してもらう。

執事の衣装で戻ってきた宗一郎はそれはもう当たり前にかっこよかった。

姫奈は心の中でこっそり、宗一郎くんは放課後でよかった…とおもった。

なぜなら、先ほどまで、顔面偏差値の高い我がクラスを一目見ようと大勢の人が押しかけていたからだ。

そうして早速試着してもらう。

「姫、これすごいな。ぴったりだ」

すぐに着替えて戻ってきた宗一郎は思った通りカッコ良過ぎた。

宗一郎に合わせて作られた衣装は、宗一郎の爽やかさややんちゃさを失わせないよう、腰にはチェーンを加え

て遊び心を出している。

だがやはり襟元などに調整が必要そうだったので、襟元に手を加えるため針を持って襟に手をかける。

すると、思った以上に顔が至近距離になっていて、びっくりした。

「わっ!」

宗一郎も照れているのか若干顔が赤い。

「ご、ごめん」

「いや、大丈夫だ」

そこからも少し手を加え、立ちあがろうとするとなんだか視界がちょっと歪んだ気がした。

気にせず立ち上がると、急に眩暈に襲われ、倒れそうになり必死に堪えようとするも結局は倒れかけてしまっ

た。

倒れそうになった姫奈を支えてくれたのはもちろん宗一郎で、とても心配そうな顔をしている。

「大丈夫か!?体調悪いんじゃないのか?とにかく保健室に行こう」

「いや、大丈夫だよ。多分、今日のお昼抜いちゃってたからだと思う」

「確かに…衣装係はみんな抜いてたな。なんか食うか?」

「いや、今は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

嘘はついていない。衣装を仕上げるためにみんなで昼食を抜いたのは事実だ。

だが…姫奈の場合はそうじゃない。

(いけない、薬は毎食後に飲む…けど今日はお昼ご飯抜いてたから薬飲んでいないんだ…)

どうしよう。もう6時になるぐらいだから夕ご飯の後に飲むしかない。

もし体調が悪くなったりしたらどうしよう。

そんなことを考えていると、突然視界が暗くなった。

なんと、宗一郎にハグをされているのだ。

混乱した頭で、かろうじてえ?と声を発する。

「ほんとは、文化祭でいうつもりだったんだ。」

何を?と考えていると急に視界が明るくなった。

真っ直ぐに宗一郎が見つめてくる。

「姫、好きだ。付き合ってほしい」

え?今彼はなんと言った?私と…?

「え?」

「実は、去年の文化祭から気になり始めてたんだ。姫はいろんな男にモテる。でも姫は鈍感だろ?それで…他のやつに

は奪われたくないって思うようになったんだ」

そう言われ、必死に頭を回らせる。

だって、ありえない。宗一郎がこんな可愛げもない女を好きになったりなんか…

すると思考を読んだかのように宗一郎が言った。

「姫は可愛い。他の誰でもそう言うはずだ。だから、俺だけの(プリンセス)になってほしい」