それからさらに数週間後

姫奈は毎日明るく過ごしていた。

最初の2、3日こそ食べ物すら食べる気力がなかったが、絶対に治らないわけじゃない、明るく元気に過ごしていた方が病気もどこか

に行ってくれるかもしれないと思うようになり、それ以来は以前にもまして笑顔を絶やさないようにした。

そして今は学校にいる。

「姫ー、ちょっと数学のノート貸してくんない?」

ぼーっとここ数週間を考えていた姫奈はそんな宗一郎の声に我に返った。

「うん!いいよ!」

そう、最近は席替えもして横の席になったからかよく喋ったりするようになった。

「ねー、告んないの?」

「ちょ、何言ってるの!?」

「そうよ姫が告ったら絶対行けると思うよ。だって宗一郎絶対姫のこと好きだし」

「瑠花ちゃんまで!」

宗一郎がこんな私のことを好きになるなんて絶対有り得ない。

だって、ノートを受け取ったあとも宗一郎は他クラスの女子の呼び出しに答えてついていってるし。

宗一郎と付き合えるなんて夢のまた夢だ。

でも、と思う。

「告ってもいいかもなぁ、」

と心の声が漏れていた。

「「絶対告れ!!!」」

それを聞き逃さなかった2人の声がぴったりとハモった。

(最後くらい、勇気を出してもいいかも。待って待ってまだ死ぬって決まったわけじゃないけど!)

そしてその日の放課後にはまた宗一郎が女子を振ったという情報が流れた。


そんなことがあってから、宗一郎と付き合っているという乙女の妄想をするようになった。

「でも…こんな私が振り回しちゃいけない」

だって私はいつか死ぬかもしれないのだから。そう、近いうちに。

宗一郎の隣に居ることができなくてもいいから、せめて一緒に卒業したい。

それでもやっぱり、宗一郎と付き合う夢を見ずにはいられないほどに大好きになってしまっていた。

そして月日が経ち、気づけば6月になって文化祭の準備期間になった。