さらに数日後

「けほっ」

最近、よく咳が出る。

それに、痰も出るようになってきた。

健康体だった姫奈はあまり病気になったことがないので体調を崩すということはこういうものなのだろうか?と思っていた。

「あらあら、咳が長引いてるみたいねぇ。痰も出ているようだし。今日病院に行ってみましょうか」

「わかった」

ということで午前中に病院に行くことになった。

「先生、お久しぶりです。最近この子ずっと咳してて、痰も出ているのですが、」

「ふむ、特に問題はないようですが、念のため細かい検査をしてみましょうか」

ということで細かい検査をしていくとのことで、色々な科に連れていかれ検査された。

丸一日どころか丸二日使い、やっと終わっていつもの先生のところに戻ってくると、別の先生がもう1人いた。

確かあの先生は、神経科にいた先生だ。

「今から検査の結果をお伝えしたいと思います。ですがその前に、お母様だけでお話いいでしょうか?」

その言葉に若干動揺しながらも母だけを残してその部屋から出た。

しばらくして部屋の中から声をかけられたので戻ると、部屋に残っていたお母さんは真っ青な顔で、震え俯いていた。

「落ち着いて聞いてくださいね。…姫奈さん、あなたは今“ギラン・バレー症候群”という難病にかかっています。」

すると、隣にいた神経科の先生が口を開いた。

「ギラン・バレー症候群についての説明は私からさせていただきます。」

その先生が言うには、ギラン・バレー症候群とは日本で年間10万人あたり1〜2人という非常に珍しい病気なのだという。

主な症状としては力が入りづらくなったり手足が痺れたり感覚がわからなくなり、重症であれば呼吸筋の麻痺、自律神経の障害によ

り生命に関わる場合もあるのだそうだ。

だが死亡率は1%であり、多くの場合発症前1ヶ月以内に風邪症状や下痢といった感染症の症状が見られるという。

つまりここ数日の不調はこの初期段階だったというわけだ。2人の先生もこの段階で見つけれたのは本当に良かったと言っている。

神経症状の発症から4週間以内に症状はピークになり、その後回復に向かっていくのだそうだ。だがそれも絶対の保証はなく、罹った

人数が少ないためまだ十分な情報がなく、実際に姫奈がどうなるのかはわからないと先生は言った。

母は先に聞いたのであろう、今姫奈が聞かされた内容に特に反応するわけでもなく、この部屋に入ってきた時と同じように俯いて震

えていた。

それからは何を会話したかさえ覚えておらず、気づいた時には家に帰りつき自分の部屋でぼーっとしていた。