-side心-
木崎くんと付き合うことになってから、ちょうど二ヶ月が経った。相変わらず、木崎くんは付き合う前とは変わらず優しいし、いつでも格好良い。
こんな人が私の彼氏だなんて、まだ信じられない。時々、あの後夜祭後の出来事は夢だったんじゃないかな、と思う。
でもたまに、帰り道で自然に手を繋いでくれたり、学校内で周りの人達からヒソヒソ言われたりする時に、あぁやっぱりあれは夢じゃなかったんだなあと嬉しくなるのだ。
「…ね、美亜?」
「んー?なになに。どーした?」
お昼ご飯を食べ終えた後、机に寄りかかりながらユキくんのスマホの画面を覗いている美亜は、ユキくんとなんだかブツブツ言っている。
「……あの…」
「なに。木崎くん?」
「…う、うん…」
「よし。はい、心の話を聞きましょう」
「ユキには聞いてないってさ」
「いやいやいや。心はそんな事言わねえよなー?」
ユキくんはスマホをブレザーのポケットにしまって、私のほうを向くように椅子に座りなおした。
少し左側に流れている前髪が、若干目にかかっている。ユキくん前髪伸びたなあ。
「ユキくん前髪伸びたね…」
「そうそう。切ってほしいけど、心は信用できないから美亜ね」
「絶対やだ。ミスったら、卒業までずっと言われそうだもん」
「そりゃあね。前髪大事ですから」
「でしょうね」
美亜もユキくんも相変わらず仲が良い。拓くんは他の友達と話しているけど、気を遣わなくていいこの空気感がとても居心地が良い。
「…で?心。木崎とどこまでいった?」
「…ど、どこまで……?」
「もう二ヶ月だし、毎日一緒に帰ってるしねえ~。そりゃあ……ねえ?」
「……た、たまに、手を繋いだり…とか……」
「たまに?そんなの、いつもじゃないの?」
「いつもじゃないよっ…!」
慌てて否定する私を見て、二人は苦笑いで顔を見合わせていた。
「うん、わかった。あとは?」
「……この間、初めて木崎くんの家にあがらせてもらって……」
「えっ!?それで!?」
急に机に乗り出す二人から、それぞれの香水の香りがする。
なんでそんなにワクワクした顔をしてるんだろう…
「…少し、話してから送ってもらった」
……あれ…?
なんか変な事言ったかな…?
突然の沈黙と、明らかに期待感の下がった二人の表情に不安になる。
