美月先輩を気にする私に対して、木崎くんは全く先輩を気にしていないようだった。
それどころか、何故かユキくんのほうをチラッと見てから、私に視線を移す。
「俺のは、着れない?」
予想外の木崎くんの言葉に戸惑う。
何度か頭の中でリピートしてみても、真意が分からなかった。
でも、やっぱり木崎くんが私に向けてくれた気遣いが嬉しい。この気持ちに嘘はつけなかった。美月先輩、ごめんなさい。
「ううん、ありがとう」
まだ少し暖かいカーディガンに腕を通す。
サイズは少し大きいけれど、木崎くんの香りがした。
…これ、思ってたよりも心臓に悪いかもしれない…
木崎くんの優しさを全身で受け止めている気持ちになって、くすぐったい感覚に陥る。
ふと、視線に気付いて顔を上げると遠くの美月先輩がこちらを見てるのが分かって、慌てて視線を逸らす。
「木崎くん、寒くない?」
「はは。大丈夫だって。そんなヤワじゃないから」
「…そう、だよね」
「冷えない?」
「もう大丈夫。ありがとう」
美月先輩にはバレている。
ど、どうしよう…
木崎くんが責められるもの嫌だし、でも私の気持ちもあるし…
今日だけ、許してください、と思った。
私が木崎くんとこんな風に話せるのは、きっと今日が最後だと思うから。
ステージイベントも全て終わり、後夜祭も終わった。
最後の仕事が後片付けで、ゾロゾロと帰り始める生徒たちを横目に、実行委員総出で片付けを始める。
準備はあんなに時間がかかったのに、片付けるのはあっという間で15分足らずで片付けを終えた。
実行委員長の「お疲れ様でした!」の合図で、実行委員も解散したのだった。
明らかに男物のカーディガンを着ている私に気づいたユキくんには、片付けの最中に興奮気味に聞かれたけれど、「まだ何も言ってないよ」と告げると、頑張れって背中を押してくれた。
木崎くんは、他の実行委員の女の子と話していて、その様子をチラチラ眺めつつポケットの中に用具室の鍵が入っていたことに気が付いた。
…あ、先生に渡すの忘れてた…
木崎くんはまだ解放されそうもないし、先に先生に届けに行くことにした。
中庭を抜けて、教務室へ向かう。
…いよいよだ。
木崎くんに、何て言おう…
まず第一声は…?
変なことを言うより、もうストレートに言っちゃう…?
でも…
羽織っている木崎くんのカーディガンを掴んで、すでに高まっている心臓を落ち着けようとするけど、全く落ち着かなかった。
それどころか、何故かユキくんのほうをチラッと見てから、私に視線を移す。
「俺のは、着れない?」
予想外の木崎くんの言葉に戸惑う。
何度か頭の中でリピートしてみても、真意が分からなかった。
でも、やっぱり木崎くんが私に向けてくれた気遣いが嬉しい。この気持ちに嘘はつけなかった。美月先輩、ごめんなさい。
「ううん、ありがとう」
まだ少し暖かいカーディガンに腕を通す。
サイズは少し大きいけれど、木崎くんの香りがした。
…これ、思ってたよりも心臓に悪いかもしれない…
木崎くんの優しさを全身で受け止めている気持ちになって、くすぐったい感覚に陥る。
ふと、視線に気付いて顔を上げると遠くの美月先輩がこちらを見てるのが分かって、慌てて視線を逸らす。
「木崎くん、寒くない?」
「はは。大丈夫だって。そんなヤワじゃないから」
「…そう、だよね」
「冷えない?」
「もう大丈夫。ありがとう」
美月先輩にはバレている。
ど、どうしよう…
木崎くんが責められるもの嫌だし、でも私の気持ちもあるし…
今日だけ、許してください、と思った。
私が木崎くんとこんな風に話せるのは、きっと今日が最後だと思うから。
ステージイベントも全て終わり、後夜祭も終わった。
最後の仕事が後片付けで、ゾロゾロと帰り始める生徒たちを横目に、実行委員総出で片付けを始める。
準備はあんなに時間がかかったのに、片付けるのはあっという間で15分足らずで片付けを終えた。
実行委員長の「お疲れ様でした!」の合図で、実行委員も解散したのだった。
明らかに男物のカーディガンを着ている私に気づいたユキくんには、片付けの最中に興奮気味に聞かれたけれど、「まだ何も言ってないよ」と告げると、頑張れって背中を押してくれた。
木崎くんは、他の実行委員の女の子と話していて、その様子をチラチラ眺めつつポケットの中に用具室の鍵が入っていたことに気が付いた。
…あ、先生に渡すの忘れてた…
木崎くんはまだ解放されそうもないし、先に先生に届けに行くことにした。
中庭を抜けて、教務室へ向かう。
…いよいよだ。
木崎くんに、何て言おう…
まず第一声は…?
変なことを言うより、もうストレートに言っちゃう…?
でも…
羽織っている木崎くんのカーディガンを掴んで、すでに高まっている心臓を落ち着けようとするけど、全く落ち着かなかった。
