私たちのクラスは、アイスも完売して大成功だった。
後片付けをしながら、いよいよ近づいてくる後夜祭を前にもう緊張してきた…
「心、後夜祭の準備、行かなくていいの?」
「…あ、行ってきます!」
慌ててスマホを持って立ち上がると、美亜にぎゅっと抱きしめられた。
「ちゃんと伝わるといいね」
耳元で聞こえる落ち着いた声色に、急に目の奥が熱くなって、涙が頬を伝う。
「あ、…ありがとうっ…美亜っ…」
「ちょ、何泣いてんの!泣くところじゃないよー」
私の頬を、美亜の細くて長い指が優しく撫でて涙を拭いてくれた。
「木崎くんに会うんだから、ちゃんと化粧直していかなきゃ!…ちょっと、じっとしてて」
美亜がササッと化粧を直して、ついでに髪型も直してくれて、上出来、と笑った。
「どう?ユキ。可愛い?」
「ん、可愛い、大丈夫!木崎も惚れ直す!」
「万が一、万が一ね?駄目だったら、慰めるから。報告待ってるよ~」
大切な友達の応援ほど、心強いものはない。
よし、と自分に気合を入れて、後夜祭のステージへ向かった。
後夜祭は毎年、校舎の外の広い特設ステージを使っているらしく、今年も例に習って外でやる事になった。
内履きを履き替えて、外に出る。
「おつかれ」
「お、おつかれさまっ…」
すでに木崎くんはそこにいた。
制服のシャツじゃなく、黒いTシャツを着ている木崎くんは新鮮で、思わずドキッとする。
隣に行くと、爽やかないつもの木崎くんの香りがした。
無視されなくて良かった…
昼間のあの感じだと、無視されると思っていたのに、木崎くんはいつも通りの優しい彼だった。
「アイス、完売した?」
「うん!全部売れたよ。木崎くんのところは?」
「こっちも完売」
「すごい人だったもんね…」
「な。高校の学園祭ってこんなに人入るんだな」
「ふふ、私もそう思った」
思わず笑ってしまった私を、じっと射抜くような木崎くんの視線が捉える。
「……ん…?」
「いや、何でもない」
木崎くんに見つめられるだけで、胸がキュッと痛くなった。
