今日も、いつも通りの朝だった。
いつもの時間にスマホのアラームがこれでもかと言うほど鳴り響いて、三度目でやっと止める。
これも毎朝の定番で、朝ご飯は必ず食パンに苺ジャム。
ご飯を終えたら、髪の毛を整えて、制服を着て学校へ向かう。

そんないつも通りの、いたって普通の、なんの変哲もない朝。
………な、はずだった。
なのに、学校に着いて下駄箱で靴を履き替えている今、感じるこの違和感。
なんだろう……

私を見ながら、ヒソヒソ噂話が聞こえてくる気がするのは、単なる被害妄想なのかな…
私なんて、イチ生徒だし、一般人だし、何も目立つこともしてないし…
スカートがすごい勢いで捲れ上がってるとか!?
髪がボッサボサとか!?

急いでチェックしても、何もかもいつも通りの私なのに。
いや、きっと被害妄想だよね…
私なんかが、噂話に上がるはずも無いし…

でも、教室までの廊下もやっぱり視線を感じるし、ヒソヒソ声はだんだん増えていく。
ヒソヒソ声のなかに、『木崎くん』という言葉が時折混ざっていることに気がついて、ハッとした。

…そっか、そうだとしたら心当たりがある。
きっと、昨日のことだ。

木崎くんが学校イチの有名人だってことは少し知っていたけど、まさかここまでだとは思っていなかった。
恐るべし…木崎くん。

急ぎ足で居心地の悪い廊下を過ぎ去り、教室に入る。


「あ、来た来た来た!!!!!」
教室の奥のほうで何人かで話していた美亜が、こちらに駆け足で向かってくる。
美亜にまだ話してなかった…怒られる…

「心ちゃん、おはよう」

瞬時に目の前に表れた美亜は、今日もロングの髪を緩く巻いて、短いスカートからは細くて長い脚がのぞき、ほのかに香水のいい匂いがする。

「…お、おはよう」
「心に聞きたいこといっぱいあってさ~、超待ってたよ」

噂好きの美亜のことだから、私に聞かなくたって全ての情報を手に入れてるんじゃないかな…

「私も美亜に聞いてほしいこといっぱいあって…」

きっと、いや絶対に、私が美亜に話したいことと、美亜が私に聞きたいことは同じだろうな。