朝起きて、洗面台の前に立つ。

ぼさぼさの黒髪ロングに可愛いとはいえないフツーの顔がうつる。




「ふわぁ、ねむ……」




大きなあくびをしつつ、身支度を整える。

少し量の多い朝ごはんを食べて、学校の準備をする。




「行ってきまーす」




カバンを持って、学校に向かった。

私は浜宮涼乃(はまみやすずの)

面倒くさいことが嫌いで読書が大好きなフツーの中学一年生です。




「すずちゃん!おっはよ〜!」

「うわぁ!」




いつも通りの道を歩いていると、後ろから何かに飛びつかれた。




「って、穂乃ちゃんじゃん」

「おーはよっ!」

「おはよ」




飛びついてきたのは、親友の鴻上穂乃(こうがみほの)ちゃん。

穂乃ちゃんはセミロングの髪を毎日アレンジしてる、おしゃれで可愛い子。

今日は高い位置でふわっとしたお団子をしている。




「ねえ聞いて〜!うちの猫がね――」




二人でおしゃべりしながら学校に向かってると、いつの間にか教室に着いた。




「じゃ、バイバーイ!」




穂乃ちゃんと別れて席に着く。

穂乃ちゃんは中心の人だかりの中に消えていた。

そこからは、たびたび大きな笑い声が聞こえる。

今日も絶好調なんだなー。

あの人だかりの原因は、鳳来狐斗(ほうらいこと)くんと言う大阪から引っ越してきた男子だ。

鳳来くんはお笑いが大好きらしくて、いっつもボケてツッコんでる。

それが異様に面白くて、いつの間にか人だかりができていた…んだけど、

人だかりができるのはそれだけじゃないんだよねー。

人だかりは、女子がほとんど。

そして、恋する乙女の瞳で鳳来くんを見つめている。

この事実から分かる通り、鳳来くんはモテています。

超が五つほどつきそうなくらいイケメンだから。

鳳来くん……あんなに囲まれて面倒じゃないのかな?

まぁ、私には関係ないか。

そう結論づけて、読みかけの本を取り出す。

本の世界に思いっきり浸ろう。

しおりの挟まっているページを開き、本の世界に入ろうとした途端、誰かの声に阻まれた。