その日は前よりもソワソワはしなかった。
諦めるための告白だからかもしれない。

いつも通り橘の車に送ってもらい、
駐車場に着いた。

いつもなら橘がすぐドアを開けるが、
今日は開けようとしなかった。

ー今言おう、
そう思い口を開こうとしたときー。

「何かあったのか?
今日の格好全然似合ってない」

橘が私に対して心配そうに尋ねてきた。

おそらく橘の目には最近暗くなり、
いきなりメイクや格好を変えて、
おかしくなってしまったのだと思われたのかもしれない。

ーこういう格好をしても、
恋愛対象として見てもらえないんだー。

そう実感すると、涙がポロポロ流れてしまった。

「悪い。そういう意味で言った訳じゃない。

橘が焦っている。

ーもう告白して困らせたくない。
泣きながら告白されても嬉しくないだろう。

元々諦めるための告白だったから、
もうする意味もないだろう。
こんなに脈なしなんだからー。

「うんうん、大丈夫。おやすみ」

私は車のドアを開けて玄関まで走っていった。

いつもは玄関まで着いてきてもらっていたが、もう一緒に耐えられなかった。

スマホから通知音があったため開けてみると、
橘からだった。

「玄関に入ったか?」

少しでも心配してくれるメッセージだと思った自分がバカだった。

まだこんなにも未練がましい。

あっちは仕事として送り届けないといけないから、確認しているだけなのに。

「入っています」

それだけ返事をして、また泣いて、
いつの間にか眠っていたようだった。