ーあれから数年が経ち、私も28歳になった。
今日は社長である父と面談する日だった。
私は父に『自分が社長になりたいと考えていること、
そして結婚相手は自分で決めたい』と伝えた。
「私も百合子が入ってしばらくしてから、そうした方がいいなと思ってたよ」
もう少し説得に時間がかかるかと思ったが、
まさかの一発で納得してもらった。
ーやっと橘に思いが伝えられる。
さすがに今日は早いかな?
でも、ずっと伝えるの我慢していたから、伝えたい。
私は急にソワソワしながら、
残業なしで仕事を終わらせることにした。
「今日は早かったんだな。」
「うん、プロジェクトを一段落したからね」
「それは良かった」
いつもは自分からもっとどんどん話し掛けるが、今日はそんな余裕はない。
いつもは橘が私のマンションの駐車場着いたら、部屋まで送ってくれる。
駐車場着いたら告白しよう。
私は車の中でどんな言葉で伝えるか、
頭で考えていた。
「着いたぞ。今日はずいぶん無口だな、
なんかあったか?」
少し心配そうに見てくれていた橘をみてキュンとした。
「私、橘が好き」
ーどんなところが好きとか、
どんな言葉で伝えようか、色々考えたが、
ポロっと口にでていた。
私は自分でも告白したことに驚いたが、
恐る恐る橘の顔を見上げた。
橘は驚いた顔をしていたが、
あまり嬉しそうには見えなかった。
「…俺は百合子には釣り合わない」
「え?
…いや、私は自分で社長になることを決めて、父にも認められたから、恋愛は自由にして大丈夫なんだよ」
「そういうことじゃない。
俺はただのボディガードだ。
百合子にはもっと似合う相手がいる」
「私は似合う相手と結婚したい訳じゃないよ」
「…すまない。今日は遅いからもう部屋まで送る」
そう言って半ば強引に車から下ろされ、
部屋まで送られたと思ったら、
おやすみの挨拶もせず、帰っていってしまった。
ー良い返事をしてもらえると確信していた訳じゃない。
でもあんなに嬉しくなさそうにされるとは…
私が好みじゃないとかではなく、
本当に釣り合わないと思っているだけなら、何度か伝えればわかってもらえるのかな?
ネガティブとポジティブな気持ちが入り交じって、その日は眠れなかった。

