頭がクラクラしてキスに追い付いていくのが精一杯だった。
「もういいか?」
切なげに懇願され、もう声も出せなかったので、力なく頷いた。
「好きだよ、愛してる」
そう囁かれながら、橘が入ってきた。
体は痛いがおそらく橘のおかげで、
思ったよりは痛くなかった。
「大丈夫か?」
「う、うん」
橘が髪を撫でながら、
今度は優しくキスをしてくれる。
橘を見上げると、
余裕のなさそうな表情なのに、
深呼吸をしながら私に合わせてくれているようだった。
「わ、私大丈夫だよ」
「ん?」
「橘の好きにして」
橘が驚いて目を丸くしていると思った瞬間ー
「煽るなって言っただろう?責任とってもらうぞ」
急に目付きが鋭くなったと思ったら激しく動かれてしまい、私はなにも言えなくなってしまった。
意識が途切れそうになりつつも、
「好きだ」「愛している」と何度も言われ、
幸せを感じていた。
ー翌日
「大丈夫か?さすがにやり過ぎた」
バツが悪そうに橘が心配そうに覗き込んできた。
「大丈夫だよ」
か細い声でそう返したが、
あまり納得できてなさそうだった。
私は気付いたら翌日の昼まで寝ていたようだった。
「相原さんと電話で話を付けた。
お見合い解消してもらった」
「あ、ありがとう」
相原さんはキューピットになってもらっただけだから、お見合いの解消は大変ではなかったと思うが、私からしようと思っていたので申し訳なかった。
「おれの働いている警備会社と取引したいとさ。
まあ、それだけの為ではないが、
百合子のボディガードを辞めて、
管理職になろうと思っている」
「そうなの?」
橘のためにも、管理職に就いた方がいいことはわかっているが、
やはり近くにいれなくなるのは悲しい。
「ああ。百合子に似合う男になりたいんだ。それに送り迎えなら彼氏としてもできるしな」
ーそんなことを考えていてくれたなんて。
「ありがとう、嬉しい」
「だから少しだけ待っていてくれ。
すぐプロポーズする」
ほぼほぼプロポーズのような言葉をいわれ、
また顔を赤くしてしまった。
「愛している、百合子」
「私も、仁」
ー私は抱き締め返して、今度は自分からキスをした。
昨日の分、私も返したかったから。
「…百合子は、喋らなくても俺を煽るよな」
私は反論する間もなく、
キスでなにも言えなくなった。
ー『普通』は翌日もするのかな、
ふと疑問に思ったが、すぐにどうでもよくなった。
私はもう橘以外とすることないんだからー
そう思って抱きしめ返して、
キスに夢中になった。

