橘がシャワーをする音が聞こえる。
ドライヤーをしながらも、
失敗したという気持ちでいっぱいだった。
鏡を見ると、
髪を洗ったせいで顔まで濡れてしまい、
メイクもほとんど取れてしまった。
ー最悪。
本当は髪もメイクも服装も全て完璧が良かったのに。
思わず泣きそうになりながら、
下を向いてドライヤーを乾かしていると、
橘がいつの間にかバスローブ姿で戻っていた。
「まだ乾かしていたんだな。貸してみろ」
優しく髪を撫でながら髪を乾かしてくれた。
ー髪を乾かしてもらうだけでドキドキしちゃう。
この先大丈夫なのかな?
私が緊張と自分の不甲斐なさでグルグル考えていたら、私の表情をみて、
「大丈夫か?嫌か?」と橘が聞いてみた。
ーできるなら、色んなことをやり直したい。
でも、嫌ではない。
「違うの。
髪洗っちゃったり、メイク落ちたりして失敗したなって落ち込んだだけ。
あと可愛い下着も着たかったし、
経験ないから橘をがっかりさせないかなとか、あと…」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ」
顔を見上げると、
真っ赤になっている橘がいた。
ーこんな橘初めて。
「俺はがっかりしない。
むしろ…メイクしてない姿が見れて嬉しい。ずっと見てみたかったから。」
「あ、あとあんまり可愛いこといわないでくれ。可愛い格好したかったとか、結構クるから」
「どういうこと?」
「とにかく、そのままでも充分俺は嬉しいってこと。そもそも俺の服着てブカブカなのも可愛いし」
「本当?」
ー思ってもいなかった言葉に、
思わず笑顔になる。
先ほど泣きそうだったため、
目は少しウルウルしながら、身長差のせいで上目遣いで聞いた。
「悪い。
ちょっと限界だ。もうベッドに行ってもいいか?」

