相原さんから正式にお見合いを続けたいと返答があり、二回目の食事会の日程が決まった。

仕事が忙しいのもあり、
あっという間に当日を迎えた。

「こんにちは、あの後どうだったの?」

ーおそらく手にキスされたときのことを言っているのだろう。

「実はバイ菌が付いているかもしれないからと、手を洗われました。
そんな潔癖なイメージはなかったのですが」

相原さんが嫌な思いをしていないか心配になりつつ、
顔を見上げると、なぜかまたニヤニヤしていた。

「ふふっ。そうか効果があったみたいで良かった」

「効果ですか?」

「こっちの話だから気にしないで。
あと電話番号交換して、これからメッセージで連絡しあってもいいかな?」

「はい、大丈夫です」

ー私はスマホを取り出し、
相原さんと連絡先を交換した。

「さすがに連絡先交換くらいじゃ何も言ってこないか…」

相原さんは入口の橘の方をチラチラ見ながらも、また少し楽しそうにしていた。

「よし、ありがとう。
あともう一つ提案があって…
良かったらお互い下の名前で呼び合わない?」

「下の名前でですか?」

ー橘のことも下の名前で呼んだことないな…

「そう。多分呼びつけで呼ぶのは難しいと思うから、お互いさん付けでどうかな?」

「わかりました…頑張ります」

「ははっ。頑張るって可愛いね。
宜しくね、百合子さん」

「はい…さ、悟さん」

大分ぎこちないが、何とか下の名前で呼べた。

「よし。じゃあ、今日はそろそろお開きにしようか。」

ちょうど橘が来たタイミングで、
「じゃあ、メッセージ送るね。
おやすみなさい、百合子さん」と言われた。

ーここは下の名前で言った方がいいよね…


「はい、おやすみなさい、さ、悟さん」

なんとか今回も下の名前で呼べて一安心していると、橘がまたすごいイライラしているのを感じた。

しかし、前回とは違い無言のまま駐車場に行き、運転している間も一言も話そうとしなかったので、
私も何も言えなかった。

「出逢って2回目で下の名前なんて早いんじゃないか?」

私のマンションの駐車場に着いた瞬間、
橘が話しかけてきた。