専属ボディガードへの片思いを諦めたら、甘すぎる豹変が待っていました


ついに、父が決めてくれたお見合いが最後になってしまった。

また頼めばお見合いの機会を作ってくれるとは思うが、このままだと上手くいく気がしない。

そんなことを思いながら、
私は顔を青くしながらお見合いの席に着いた。

「お待たせしました。
初めまして、相原悟です」

顔を見上げると、
そこには爽やかな笑顔を浮かべた男性がいた。

ー親しみやすそうな笑顔で誰からも好かれそう。
橘とは正反対なタイプかもしれない。

「初めまして、秋山百合子です」

「お会いできて嬉しいです」

相原さんはそう言って私に笑顔を向けたあと、入口にいる橘の方を見た。

ーやっぱり今回もダメかも。
私は相原さんの顔を恐る恐る見た。

しかし、そこに強ばっている表情ではなく、
なぜかにやついているように見える、
相原さんの顔があった。

ーなんでそんな表情をしているのだろう?

「すみません、入口にいるのは?」

「ああ。私のボディガードの橘です。
可能であれば気にしないで頂ければ」

「ふふ、すごい目付きでこちらを見ていますね」

相原さんの言う通り、
橘は鋭い目付きでこちらを見ていた。

いつもより鋭い気もする。

「彼はお見合いに反対なのでは?」

「いえ、そんなことはありません」

「立場上隠しているのかもしれませんね、
秘めた恋心を」

相原さんはニヤニヤしながら楽しそうに話している。

どうやら橘の表情をみて、
私に恋をしていると勘違いしているようだった。

「すみませんが、それは有り得ません」

「どうして、言いきれるのですか?」

ー本当は会ったばかりの人にこんな話しはしたくない。

でも、誤魔化せるような相手ではなさそうだったから正直に話すことにした。

「私は彼に告白したのですが、振られているので」

もう日にちが経っているのに、
いまだに泣きそうになってしまう。

それがばれないように下を向いて答えた。

「まさか…すみません、
話しにくいことを話させてしまって…
俺の勘はなかなか外れないのですが…」

そう言って口元に手を置いて、
何やら考え事をしているようだった。

「あの、もし言いにくくなければなのですが、告白のときなんと言って断られたのですか?」

「私と彼だと釣り合わないと言われました。
でも、それは建前で私のことが好みじゃなかったのだと思います」

相原さんは、なるほどと呟いた後、
また考え事をしているのか無言になった。

「キューピットになりましょうか?」

沈黙の後いきなり発言したと思ったら、
突拍子もないことで驚いた。

「どういうことですか?」

「私があなたも彼の恋のキューピットになろうかなと思って」

「えっと、私の話聞いていましたか?」

「はい。
でもやはり信じられなくて…
俺は自分の勘を外したことないんですよ」

「でも、はっきり断られているので」

「まだ彼のこと好きなんじゃないんですか?」