溺愛している娘は俺の宝物だった

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「俺は、ゆみが亡くなったってきかされたあの日、かなり傷ついた。現況思い出せなかったのは、思い出したくなかったのは、もうこの世にいないのがすごくやるせなくて、俺自身封印したんだと思う」

 言いつのる俺の胸に、焼き付いている姿。

 よく笑う、可愛い子だと思った。

 柔らかな物腰に、愛らしい仕草。

 ピアノを弾いたり歌う時は、凛然とした艶姿。

 俺の心が強く引き寄せられたのを、今でも覚えている。

 愛おしく、大切にしたいと思っていた。

 仕事と学業と忙しいながら、時間を見つけてはゆみに会いに行ったのに。

 唐突にいなくなってしまった、胸奥に突き刺さる歯痒い想い。

 今まさに、俺は全身全霊に忘れられなかった温もりを感じている。

「……私は、もう歌えません。歌おうとすると過呼吸になり、それは原因不明で声が出なくなってしまうのです」

「ゆみが歌うことは、俺にとっては何も関係ない。俺はゆみ自身が欲しい。安心して、俺の所にいなよ。任せて」

 俺は、ぎゅっと抱きしめる。

「そんなことはない。私は、ピアノだって、震えてしまって、弾けません。本当に、もう歌えない、のです……」

 ゆみは、目元に浮かぶ涙をこらえながら、途切れ途切れの掠れた声音で言う。

「だから、それは関係ないって」

「歌えないと、何もない。私の中には何も……」

 ゆみは、ぷるぷると首を横に振っている。

「ゆみ、俺はそんなものなくてもいい」

「私、その後ずっと、母さんに虐待されて、体もぼろぼろなんです。受け続けた傷跡はまだ痣もあり、酷く疼いていて……。母さんの腹いせ以外に、私には他に使い物なんて……」

 ゆみは、泣くのを堪えた声を震わせ、辿々しく言い、両手を立てて、俺から逃げようとする。

「もう、何も言うな」

 俺は、ぎりっと歯を噛みしめて、ゆみを胸奥に押しつけた。

「でも、本当のことで、いつか、歌うためにと、まだ処女のまんまだけど。体は虐待で、本当、ボロボロで……」

「体なんて関係ない。だからゆみ、俺に頼ってくれ」

「杉本さん……。だから」

「以前のように、まひとでいい。俺がこれから先ずっと、ゆみを守ってやる。もう何も考えないで俺のそばにいて。ね?」

 俺は、決意を込めて、はっきりと告げたーー。