* * *
「お待たせ、ニコラちゃん!」
ライアンとニコラは並んで歩き、馬車に向かった。
「さっき一緒にいたのネフィリスって人だよね?あの人よっぽどゴシップが好きみたいで昨日の夜、マントを盗まれた時のことを根掘り葉掘り訊かれて困ったよ~」
と、ライアンは話した。
待機している馬車の近くに着くと、そこにはアベルと見覚えのない少年が立っていた。
「本日、貴方と行動を共にしていただく方です」
アベルは冷ややかな声でそう告げた。
「ええと……この子が、ですか……?」
「子供ですが貴方とは比べ物にならないくらいほど高貴なお方です。くれぐれも失礼のないように」
早口で答えたアベルは、肺の空気をすべて吐き出すかのように、深々とため息をついた。どうやら、この同行には納得していないらしい。そんなアベルの態度を見てライアンは苦笑を漏らす。様子を見る限り、ライアンと少年は顔見知りのようだった。
「チャリオだ。今日はよろしく頼む」
そう名乗った少年に、アベルが小さく目を見開く。しかし、ニコラの視線に気づくと咳払いをして、いつもの表情に戻った。
チャリオと名乗ったその少年は、艶のある黒髪と黒い瞳を持ち、年の頃は10~12歳ほどだろうか。年齢に似合わず落ち着いた態度で、どこか聡明さを感じさせる。身に纏っているのは飾り気のないジャケットスーツだが、上質な生地の質感が、彼の身分の高さを物語っているようだった。もしかすると貴族の子息か、それとも王宮に仕えているのだろうか。もっとも、子供が王宮で働けるものなのか、ニコラにはわからなかったが……。
「ニコラです。えっと、よろしくね?」
「それじゃ、挨拶も済んだところでニコラちゃん家に出発~!」
再びため息をつくアベルと対照的にライアンは陽気に馬車へ乗り込んだ。ニコラとチャリオもライアンに続く。
三人はアベルに見送られて王宮を後にした。
