「正式な婚約解消の申し入れは、私がする。リリアナ、よいな?」
お父様とエドワード様のお父様は親友だったと記憶している。
だからこそ、私は自分の境遇を家族には相談できなかった。おそらくは皆知っていたのかもしれないけれど、私が自ら申し出るまでは口を出さないでいてくれたのだ。
もしかしたら、これから良くなるかもしれないと……私だって信じていたから。
背筋をしっかりとのばして、私はお父様を見た。
「はい。お父様。エドワード様のご希望通りに、婚約の解消を進めてくださいませ」
私の決意を聞いたお母様も静かに頷き、レオン兄様にいたっては腕を組んだままぶんぶんと首を振っている。
「慰謝料も請求いたしましょう、旦那様。わたくしたちの前では猫をかぶっていたのですわね、あの子」
「では早速、あちらの家に申し入れを……」
お父様がそう言った瞬間、サロンの扉が控えめにノックされた。
「旦那様、奥様方。ご歓談中失礼いたします」
執事の落ち着いた声が響く。
「火急の案件とのことで、旦那様にご来訪があっておりますが……」
一瞬、場の空気が変わった。
「……こんな時間にか? 今はこちらも手が離せん」
お父様が怪訝そうに顔を上げる。
前触れもなしに来訪があることはとても珍しい。
ただ、そんなことはあのベテランの執事も分かっているはずだもの。それでもこうしてお伺いを立てるということは……我が家よりも身分が高い家門だということかしら。
「それが……王宮からでして。現在、応接室にてお待ちいただいております」
冷や汗をかいているように額の汗をぬぐった執事は、おずおずとそう答えた。
「「――王宮?」」
お父様とお兄様が呆気にとられたように声を漏らすと同時に、私もお母様も眉をひそめた。
私の予想が嫌な方向に当たってしまった。
高位貴族だと思っていたら、それを飛び越えて王家から……?
「分かった、私が急ぎ対応しよう。レオン、くれぐれも決闘など申し込みに行ってはならぬぞ」
お父様が立ち上がり、お客様の対応に向かおうとしたところで、扉の向こうが騒がしくなった。
お待ちください、という侍女の声が聞こえたような。
お父様とエドワード様のお父様は親友だったと記憶している。
だからこそ、私は自分の境遇を家族には相談できなかった。おそらくは皆知っていたのかもしれないけれど、私が自ら申し出るまでは口を出さないでいてくれたのだ。
もしかしたら、これから良くなるかもしれないと……私だって信じていたから。
背筋をしっかりとのばして、私はお父様を見た。
「はい。お父様。エドワード様のご希望通りに、婚約の解消を進めてくださいませ」
私の決意を聞いたお母様も静かに頷き、レオン兄様にいたっては腕を組んだままぶんぶんと首を振っている。
「慰謝料も請求いたしましょう、旦那様。わたくしたちの前では猫をかぶっていたのですわね、あの子」
「では早速、あちらの家に申し入れを……」
お父様がそう言った瞬間、サロンの扉が控えめにノックされた。
「旦那様、奥様方。ご歓談中失礼いたします」
執事の落ち着いた声が響く。
「火急の案件とのことで、旦那様にご来訪があっておりますが……」
一瞬、場の空気が変わった。
「……こんな時間にか? 今はこちらも手が離せん」
お父様が怪訝そうに顔を上げる。
前触れもなしに来訪があることはとても珍しい。
ただ、そんなことはあのベテランの執事も分かっているはずだもの。それでもこうしてお伺いを立てるということは……我が家よりも身分が高い家門だということかしら。
「それが……王宮からでして。現在、応接室にてお待ちいただいております」
冷や汗をかいているように額の汗をぬぐった執事は、おずおずとそう答えた。
「「――王宮?」」
お父様とお兄様が呆気にとられたように声を漏らすと同時に、私もお母様も眉をひそめた。
私の予想が嫌な方向に当たってしまった。
高位貴族だと思っていたら、それを飛び越えて王家から……?
「分かった、私が急ぎ対応しよう。レオン、くれぐれも決闘など申し込みに行ってはならぬぞ」
お父様が立ち上がり、お客様の対応に向かおうとしたところで、扉の向こうが騒がしくなった。
お待ちください、という侍女の声が聞こえたような。
