博臣の話に寄ると彼はアルバイトを掛け持ちしながら劇団で役者をしている、とのこと。それは私の周りにいないタイプだった。
伊集院財閥と言えば日本でトップクラスだ。当然周りはそれに釣り合う金持ちが取り巻いている。だからかな、こうゆう生き方をしている人が新鮮だった。
博臣との生活は意外と退屈しなかった。彼は父に言われた通り、別荘の家事全般、私の身の周りの世話をしてくれた。最初は執事のようにこき使ってやろうと思ってたのに、
「それぐらい自分でやれ」だの「何もできないんだな、お嬢様は」とその度に揶揄した言い方で突っぱねられる。
今まで私を取り巻いていた男たちは私が頼まなくてもやってくれたのに、何なのアイツ!
と、最初は苛立ったけれどその傍ら、博臣はきちんとやり方を教えてくれる。と言うわけでこの夏で、私は一人でもできることが多くなった。
そんなある日博臣が珍しく出かけていった。単なる暇つぶしと、ほんのちょっとの好奇心で後を尾けて行ったら、ヤツは可愛らしい女の子と笑いながら町のマーケットを歩いていた。
何よあれ。何よ……
何だか無性に腹が立った。
だって博臣は私の前であんな風に笑わない。さりげなく彼女の荷物を持っちゃって。私には自分のことは自分でしろとか言うくせに。
その日夕方に帰ってきた博臣はやけに上機嫌だった。キッチンのテーブルに買ってきた食材を並べながら
「こないだあんた俺のグラタン美味しいって言っただろ?市場で新鮮な野菜揃えてきたからもっとうまいグラタン作ってやるよ」
知ってる。可愛い“彼女”と一緒に買い物してたのを―――私は見たのよ。
後を尾けていったことは卑怯で卑劣なことだったけれど、でももっと背徳的な物が欲しくなった。
私は博臣の一見して華奢に見えるけれどきれいな筋肉がついた腰に腕を回しきゅっと抱き寄せた。
博臣が目を見開いたのが気配で分かった。
伊集院財閥と言えば日本でトップクラスだ。当然周りはそれに釣り合う金持ちが取り巻いている。だからかな、こうゆう生き方をしている人が新鮮だった。
博臣との生活は意外と退屈しなかった。彼は父に言われた通り、別荘の家事全般、私の身の周りの世話をしてくれた。最初は執事のようにこき使ってやろうと思ってたのに、
「それぐらい自分でやれ」だの「何もできないんだな、お嬢様は」とその度に揶揄した言い方で突っぱねられる。
今まで私を取り巻いていた男たちは私が頼まなくてもやってくれたのに、何なのアイツ!
と、最初は苛立ったけれどその傍ら、博臣はきちんとやり方を教えてくれる。と言うわけでこの夏で、私は一人でもできることが多くなった。
そんなある日博臣が珍しく出かけていった。単なる暇つぶしと、ほんのちょっとの好奇心で後を尾けて行ったら、ヤツは可愛らしい女の子と笑いながら町のマーケットを歩いていた。
何よあれ。何よ……
何だか無性に腹が立った。
だって博臣は私の前であんな風に笑わない。さりげなく彼女の荷物を持っちゃって。私には自分のことは自分でしろとか言うくせに。
その日夕方に帰ってきた博臣はやけに上機嫌だった。キッチンのテーブルに買ってきた食材を並べながら
「こないだあんた俺のグラタン美味しいって言っただろ?市場で新鮮な野菜揃えてきたからもっとうまいグラタン作ってやるよ」
知ってる。可愛い“彼女”と一緒に買い物してたのを―――私は見たのよ。
後を尾けていったことは卑怯で卑劣なことだったけれど、でももっと背徳的な物が欲しくなった。
私は博臣の一見して華奢に見えるけれどきれいな筋肉がついた腰に腕を回しきゅっと抱き寄せた。
博臣が目を見開いたのが気配で分かった。



