「頭痛っ……」


その日、私は割れるような頭痛で目が覚めた。頭を上げると鉛のような重さに再び枕に吸い込まれる。何度目かの抵抗で何とか起き上がり、記憶に薄い部屋を見渡して


ああ、そっか……今年の夏はこの“田舎の別荘に幽閉”されてるんだ、私。と改めて実感する。


と、言うもの私は都会の大学生で長い夏休みがはじまる前、派手に夜遊びを繰り返していたら、激怒した父が「謹慎」の意味で私をここへやったのだ。

最初の頃は『私はもう二十歳よ!子供じゃないんだから』と反発していたものの、父の『小遣いを減らす』と言う発言に了承せざるを得ない状況に陥った。

良い歳して小遣いを貰って遊び回ってる私は、父の言う通りやっぱりまだまだ子供なのだ。

“ここ”は私の住む都会と違って本当に田舎で、父の目が届かないこの場所で適当に夜遊びしようにも、夜も20時を過ぎるとほとんどの店が閉店して光が無くなる、と言うど田舎だ。遊ぶ場所もなく結局、腹いせに別荘にあった父のコレクションしているブランデーを片っ端から飲んでやった。その結果がこれだ。

重い足取りで二階の寝室から一階のリビングに向かう。水でも飲めばこの頭痛が和らぐかもしれない。

リビングはカーテンが開け放たれていて、眩しい朝日が私の目を刺激する。リビングの窓の向こう側は広い庭になっていて、小さいがプールもある。

そのプールから今、まさに上がってきた若い男を目にしてまばたいた。

見知らぬ男だった。

年齢は二十代前半ってところかしら。一見して女性のような中世的で整った顔立ちをしていたが、裸の上半身はきれいに鍛え上げられていた。

てか、誰………?