7日間の恋






ドアが開くと何事もなかったような顔をしている津川さんがいて。

微妙な空気が流れる。



『じゃ、じゃあ…な』


津川さんがグニャリと笑うと走って去っていこうとした。


『おい』

そこで稲葉さんが初めて口を開く。


そして津川さんの腕を掴んだ。



『あ、いや…俺は…『とにかく入れ』

稲葉さんは厳しい目で津川さんの言葉を遮る。



『ホントに、そういうつもりじゃなかったんだって!

たまたま…たまーたま、通りがかったら声が聞こえて…


ホントにたまたまだからな』


あまりの必死さに笑いがこみ上げてくる。

それを必死にかみ殺し稲葉さんの言葉を待つ。



『どこから聞いてた?』



『どうして結衣ちゃんは彼氏と別れたの?ってところから…』


私は交わした会話を思い出す。


それって…



『じゃあ僕の告白も聞いたんだ?』

津川さんは曖昧に微笑む。



『それってさ、絶対初めから聞くつもりだったよな?』


津川さんはマジでごめん!と、言って病室を飛び出した。


『困ったヤツだな…まったく』


稲葉さんはそう言ってふっと笑ったのだった。