『僕はずっと、好きだった。
どこがどう好きかとか分からない。
でも、気づいたら好きになってた。
ただ、最後に僕はあんなことを言ってしまった。』
稲葉さんの腕に力が入る。
最後…退院する前日
稲葉さんは私に勘違いするなと言った。
稲葉さんは私みたいな子供は最初から相手にしてないと言った。
あのときのことを思い出すだけで胸が痛む。
けど、それでもキライになることはできなかった。
『僕は結衣ちゃんに幸せになってほしかった。
僕の手では幸せにできない、ってそう思ってた。
だから、あんなこと言ったんだ。
あれで結衣ちゃんが僕のことなんてキライになってくれれば、って。
本当は…キライになんてなってほしくなかったんだけど』
もしかしたらあのとき、稲葉さんは気づいていたのかもしれない。
私のキモチに。


