『振り向くな』
命令口調の稲葉さんにときめく。
今…稲葉さんの左腕は私をしっかりと抱きしめていて。
あまりの至近距離にドキドキがおさまらない。
もしかしたら稲葉さんにこのドキドキが伝わっているかもしれない。
『絶対、振り向かないで。』
さっきとはうって変わっていつも通りの稲葉さんの口調。
ただ、その声は少しだけ震えていた。
『僕が…結婚しなかった理由、言ったよね』
コクリと頷く。
『僕にはずっと、好きな人がいた。
あのとき…結衣ちゃんと出逢ったときから』
私と…出逢ったとき…から…??
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