「翼兄、好きな人いる?」
この莉巳ちゃんの言葉に僕は呑んでいたお茶を吐き出しそうになる。
『ど、どうしたの?いきなり…』
かろうじてお茶を飲み込み、質問返し。
「いや、ちょっとね?
結衣先生はいるんだって。
翼兄は??」
『なんで結衣ちゃんが出てくるの??』
すかさずツッコむ。
今、結衣ちゃんが出てくるところじゃなかったよね?
「まあ…気にしないの。
で、いるの?いないの?」
『…………………』
言葉につまる僕。
正直に答えればいいのか、ウソをつけばいいのか分からない。
「まあ…いいんだ、別に。
とにかくさ、聞いてみてよ」
何を?と、聞くと莉巳ちゃんはニヤッと笑う。
「結衣先生が彼氏と別れた理由」
結衣ちゃんが彼氏と別れた理由?
なんでだ?
なんで僕がそれを聞かなくちゃいけないんだ?
それに、結衣ちゃんは話したくなさそうだったんだよ?
ってことは僕には言えないんだよね?
だったら…聞けないんじゃないか?
なんて思いを巡らせているとドアがノックされる。
また訪問者か。
って、僕が呼んだ人じゃないか。
『どーぞ』
と、声をかけると扉が開いた…
そして僕の開けてはならない扉も開くはめとなる…
―Side 稲葉翼 終―


