『ごめんね、呼び出したりなんかして。
どうしても話したくてね』
申し訳なさそうな顔をする稲葉さん。
「いいんですよ、全然」
そう私が言うと稲葉さんはニコッと笑う。
その笑顔を見れば疲れなんて吹っ飛びますよ
なんて本人に言えるワケがない。
「事故、大丈夫だったんですか?」
『まあまあだね。
車はぺしゃんこ。
結構気に入ってたからちょっとショックだったけど』
稲葉さんは苦笑い。
そして続ける。
『相手は平謝り。
起きたことをとやかく言うつもりないから、こっちが申し訳ないほど謝られて。
ちょっと手を焼いてるところ。
僕的にはいい療養だよ。
最近、仕事ばっかりで疲れてたしね』
それに…
と、稲葉さんは言ったまま黙り込む。
そして俯き、小さな声で呟いた。
『それに、こうしてまた…結衣ちゃんに逢えたんだし』


