あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

あたしは、空き教室のドアを乱暴に開けて中に入った。


中には、琴音ちゃんと、白夜らしき一人の人。それから、漣がいた。


あたしが入ってきたことに驚いたのか、琴音ちゃんは大きく目を見開いた。




「っ、どうして……?」



「……」




あたしは、琴音ちゃんの問いには答えず、漣の目の前に立った。




「あ? お前……」


「覚えてくれてたんだ、どーも」



あたしに興味なんてなさそうだったから、覚えてないと思った。



「……乃亜って言うのは、お前か?」


「はあ……あたし、昨日名前言ったよね。人の名前くらい覚えれば?」


「ちっ」



昨日と流れが同じ気がする。


あたしがため息をつくと、琴音ちゃんは驚いたように声をかけてきた。




「の、乃亜ちゃん。玲夜くんと知り合い……?」


「……会ったのは、昨日だよ」




初めて会ったのは『あの時』だけど。


あたしがかなり冷たい態度をとっているからか、琴音ちゃんは少しだけ声が震えている。




すると、琴音ちゃんを抱きしめている男があたしを睨みながら声をかけてきた。




「お前が、琴音を泣かせたの?」


「……そうだね、あたしが原因かも」



あたしがそう言うと、そいつはあたしの胸ぐらをつかんだ。



「っ、お前……!!」



……やっぱり、こいつらってバカだ。




「あたしに怒るよりも、まずは誤解くらいといたらどうなの? 姫一人すら守れないなら、やめたらいいのに」


「は? 誤解?」


「わかんないんだ。琴音ちゃん、さっき悪口言われまくってたけど。『最低』『男好き』って、すごい言われようだと思わない?」


「……っ」


「白夜と関わってるからだよ。あたしなんかに怒るより、まずは男好きじゃないとか、周りの人に言ったら?」




あたしが冷たく言うと、そいつはうつむいた。