あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

「……乃亜」






俺は、乃亜からできるだけ距離をとって、そっと呟いた。



背中に痛みを感じながら、そう言う。







乃亜が、俺のことをじっと見つめた。



獲物を捕らえるような目で。








……俺をしっかり見ている、今だ。











俺は、ぱっと走って、乃亜の目の前まで行った。



突然のことに、乃亜も驚いている。








……重症なんて覚悟できてる。









俺は、乃亜を強く抱きしめた。







「っ、え?」



「ごめん、俺のこと嫌ってるなんて知らなかった。そんなに思い詰めてたなんて知らなかった」






ぴたり、と動きが止まる。



今のうちに、全部話してしまおう。








「……乃亜は、俺たち白夜と一緒に居て、どうだった? ずっと嫌だった? 全部が嘘だった?」



「……」



「少なくとも、俺は、俺たちは。乃亜と一緒に過ごせてうれしかった」







嘘偽りない、本音。



乃亜が、何を考えているか。




正気じゃないから、まともに話もできない状態の今。



でも、どうしても今、伝えたかった。









「あたし、は……っ」








乃亜の雰囲気が、少しだけ和らいだような気がした。



そのとき。









「乃亜!! わかってる!? そいつは嘘を言ってるだけ! 怜のこと、忘れたの!?」




「……れ、い」







呆然としたように、名前をつぶやく乃亜。





乃亜にとって、その怜ってやつは、どんな存在だろう。










「そうだ……怜の、痛みはこの程度じゃない……殺さなきゃ……怜の分まで」