あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

と、次の瞬間。




――――ドンっ。






俺の体は、宙に浮いていた。



見える景色が、スローモーションのようにゆっくりと動く。









俺は、乃亜に蹴り飛ばされていた。








「っ、が……っ」





壁に自分の体がぶつかって、声が出る。



つ、よ……っ。






これは、本当に、乃亜―――?










「こんなんでへばってんの? まだまだだよ」







そう言って、何度も蹴り技を入れてくる。



いくらかわしても、動きが早すぎて、すぐに次の蹴りが飛んでくる。




休んでる暇なんてない。







俺が、乃亜に反撃できたらいいだろう。







でも―――できねえよ。



だって、乃亜は乃亜だから。









「銃は使わない。だって、銃だったら痛みも感じないうちに死んじゃうじゃん」





なに言ってるんだ?



やっぱり、正気じゃねえ……!





「でも、お前はお母さんと同じような殺し方しないから。自殺まで追い込んじゃえばいい」




お母さんと、同じ殺し方……?





「あはは、それよりも、あたしと同じように、毎日辛いって思いながら生きておけばいい。生き地獄がお前にはちょうどいい」



「っ、正気に、戻れ、乃亜!!」



「あたしが、いつもどれだけしんどかったか、わかんないから軽く言えるんだ」



「そんなの、俺にはわからねえけど……っ!」



「じゃあ喋んな、黙れ」







俺と話している余裕がある。



こっちは、そんな余裕もほとんどないのに。








それよりも、乃亜は、華皇の総長だったのか?



誘拐じゃなくて、俺をはめたのか?




今までの笑顔も、全部嘘だったのか?