あたしは、震える体を抑えるように、深呼吸をした。
そして、リーダー格の男を見て、言う。
「―――――これは命令だ。今すぐ失せろ」
あたしが言うと、しん、と辺りが静まった。
「はあ? なんで俺たちがお前のような小娘に命令されないといけない?」
「目上の人への態度には気を付けろ」
玲夜がいるから、できるだけ正体を隠し続ける。
やっぱり、知られたくないから。
玲夜は、驚いたようにあたしを見ている。
あんまり、見ないでほしいなあ。
「俺に命令することを許されるのは、お嬢様と怜様だけだ」
「――――だから、命令をしている。お前の頭は小学生レベルか? 愁」
「は……? なんで、俺の名前を……っ」
「あんまり、あたしも騒動は起こしたくないの。だから、見逃してよ」
殺気を消して、笑って愁に伝える。
あたしの笑顔を見て、愁は大きく目を見開いた。
「ま、まさか……っ。髪色も、目の色も違うが……っ」
「玲夜、行こ?」
「あ、ああ」
あたしは玲夜の手を引っ張って、愁たちに背中を向ける。
すると、愁の声があたりに響いた。
「お嬢様!! なぜ、漣の味方をするのですか!?」
「……」
「俺たちは、お嬢様の帰りをずっと待っていました!! なのに、どうして……っ。空白の5年間の間、なにがあったのですか!?」
あたしは、聞こえないふりをして、早歩きで行く。
玲夜は、あたしを見て、驚いたような視線をずっと向け続けてきた。
「お願いだから、返事をしてくださいっ……!! 帰ってきてください……っ」
あたしは、ぴたりと足を止めて、一言だけ言う。
「……あたしは、花宮 乃亜だよ。またね」
それだけ言って、あたしは玲夜と一緒にまた歩き出した。

