あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─


あたしは、震える体を抑えるように、深呼吸をした。









そして、リーダー格の男を見て、言う。









「―――――これは命令だ。今すぐ失せろ」







あたしが言うと、しん、と辺りが静まった。






「はあ? なんで俺たちがお前のような小娘に命令されないといけない?」




「目上の人への態度には気を付けろ」






玲夜がいるから、できるだけ正体を隠し続ける。




やっぱり、知られたくないから。




玲夜は、驚いたようにあたしを見ている。



あんまり、見ないでほしいなあ。








「俺に命令することを許されるのは、お嬢様と怜様だけだ」




「――――だから、命令をしている。お前の頭は小学生レベルか? (しゅう)




「は……? なんで、俺の名前を……っ」




「あんまり、あたしも騒動は起こしたくないの。だから、見逃してよ」






殺気を消して、笑って愁に伝える。




あたしの笑顔を見て、愁は大きく目を見開いた。






「ま、まさか……っ。髪色も、目の色も違うが……っ」



「玲夜、行こ?」


「あ、ああ」








あたしは玲夜の手を引っ張って、愁たちに背中を向ける。



すると、愁の声があたりに響いた。






「お嬢様!! なぜ、漣の味方をするのですか!?」 



「……」



「俺たちは、お嬢様の帰りをずっと待っていました!! なのに、どうして……っ。空白の5年間の間、なにがあったのですか!?」






あたしは、聞こえないふりをして、早歩きで行く。


玲夜は、あたしを見て、驚いたような視線をずっと向け続けてきた。






「お願いだから、返事をしてくださいっ……!! 帰ってきてください……っ」





あたしは、ぴたりと足を止めて、一言だけ言う。






「……あたしは、花宮 乃亜だよ。またね」








それだけ言って、あたしは玲夜と一緒にまた歩き出した。