「あ、もうすぐ花火が打ち上がる時間だね」




琴音ちゃんが、時計を見ながらそう言う。


花火が打ち上がるのは20時から。



真夏でも、辺りが完全に暗くなってきたころだ。






「……俺は乃亜と二人で見たい」


「え?」


「あ、ならここからはそれぞれで別れてみる?」


「ちょ、夏希くん!?」





玲夜と夏希さんが納得して、あたしと琴音ちゃんはあわあわするばかり。





「じゃ、行こうぜ、乃亜」


「え!? あ、うんっ」




突然手を握られたことで、びっくりしてしまう。


すぐに頷いて、あたしは玲夜について行った。

































しばらく、暗い夜道を二人で歩き続けた。


坂道を上って、あたしたちは高い位置に着いた。




「うわあ……!!」




ちょっとした丘のようなところ。


上から見下ろす、祭り会場と景色を見て、あたしは思わず感嘆の声をもらした。




「ふっ、綺麗だろ?」



「うん!! 玲夜はここを知ってたの?」



「ああ。ここは花火がよく見えるし、穴場なんだ。だから、人なんてなかなか来ねえよ」



「へえ……あっ!」





ヒュー、と、花火が上がる音が聞こえた。


そして、綺麗な夜空に、大きな花を咲かせた。





―――ドンっ。


――――ヒュー。






いくつもの花火が上がって、あたしは花火に見惚れていた。


夜空を彩る、たくさんの花火。




花火が上がった時間は、ほんの5分程度。



でも、その時間がとても長く感じられた。