「あ、もうすぐ花火が打ち上がる時間だね」
琴音ちゃんが、時計を見ながらそう言う。
花火が打ち上がるのは20時から。
真夏でも、辺りが完全に暗くなってきたころだ。
「……俺は乃亜と二人で見たい」
「え?」
「あ、ならここからはそれぞれで別れてみる?」
「ちょ、夏希くん!?」
玲夜と夏希さんが納得して、あたしと琴音ちゃんはあわあわするばかり。
「じゃ、行こうぜ、乃亜」
「え!? あ、うんっ」
突然手を握られたことで、びっくりしてしまう。
すぐに頷いて、あたしは玲夜について行った。
◇
◆
◇
しばらく、暗い夜道を二人で歩き続けた。
坂道を上って、あたしたちは高い位置に着いた。
「うわあ……!!」
ちょっとした丘のようなところ。
上から見下ろす、祭り会場と景色を見て、あたしは思わず感嘆の声をもらした。
「ふっ、綺麗だろ?」
「うん!! 玲夜はここを知ってたの?」
「ああ。ここは花火がよく見えるし、穴場なんだ。だから、人なんてなかなか来ねえよ」
「へえ……あっ!」
ヒュー、と、花火が上がる音が聞こえた。
そして、綺麗な夜空に、大きな花を咲かせた。
―――ドンっ。
――――ヒュー。
いくつもの花火が上がって、あたしは花火に見惚れていた。
夜空を彩る、たくさんの花火。
花火が上がった時間は、ほんの5分程度。
でも、その時間がとても長く感じられた。

