あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

「――――お? 姉ちゃんたち、可愛いなあ。よかったら俺らと一緒に回らねえ?」



「ああ。ちょうど女二人みたいだしな。俺らも男二人だし」







後ろから声をかけられた!?



長身の男の人が二人。二人とも狐の面をつけていて、顔はわからない。





でも……どっかで聞いたことあるような声だな?







「わ、私たち、連れがいるので……!」




琴音ちゃんがおろおろしながらそう言うと、男の一人がまあまあ、と言って琴音ちゃんの腕をつかんだ。




「すみません、あたしたちはあんたらにかまってる暇ないので。失礼します」






あたしがきっぱりとそう言うと、もう一人があたしの体を抱きしめてきた。



は!? 初対面の相手にここまでする!?



普通に気持ち悪いんだけど。






「だめ、行くな」




耳元でそう言われて、あたしは動きがぴたっと止まった。







ん? やっぱり、この声どこかで……。



そう思っていると、琴音ちゃんの腕をつかんでいた男が声を上げた。






「あーっ!! 蒼、ずるいぞ! 抜け駆けはダメだろ!!」



「蒼……?」





あたしが、繰り返して名前を呼ぶ。



すると、ぎくっと肩が動いた。






あ、わかった!



聞いたことあるなあと思ったらあれだね!




蒼と三月だ! でも、なんでわざわざ名前を呼ばないんだろ。







「ねえ、」



「しっ。俺らはナンパしてると思って。白夜の対応が見たい」



「あー……」






蒼にそう言われて、納得した。



なんとなくだけど、多分そうだろう。






あたしがナンパされている時、白夜はどうするのかが気になったんだろうな。



白夜を見定めるように。









「の、乃亜ちゃん……っ。はやく逃げようよっ……」






琴音ちゃんが涙目で訴えてくる。



そこで、あたしは笑顔で琴音ちゃんに言った。





「だいじょーぶだって! なら、一緒に行こうよ、お兄さんたち」




「わかってくれてよかった。じゃ、いこーぜ」




「ちょ、乃亜ちゃん!?」