あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

「覚えてはいないみたいだね。じゃあ……」





そう言って、乃亜は前髪を横に流す。



少し長めの前髪だったから、しっかりとは顔が見えなかった。





でも、今は、しっかりと顔が見えた。








「――――あたしの顔に、見覚えはある?」










――――この顔を、俺は知っている。




でも、どうして……。








「―――シエル?」






俺が、名前を呼ぶ。



すると、乃亜は、口をぽかんと開けた。







「へ?」



「乃亜の顔……シエルみたいだ」



「シエル? だ、誰?」



「……俺の、親友」



「外国人っぽい名前だね。いや、外国人? 女の子?」







いや……シエルは。







「日本人の男だ。それに、ハーフっぽい顔立ちでもない」



「うーん……なら、違う、のかな? ねえ、シエルってどんな人なの?」







興味深々な様子で、俺に聞いてくる。



でも、シエルは……。