あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

「……人前でも、一人のときも。もう、泣かないって決めたのに。今日は泣き過ぎだね」



「泣き過ぎじゃない。何があったのかは知らねえけど。耐え続けたら限界が来る」



「……」






「我慢すんな。辛かったら、俺が話を聞いてやる」







俺が、安心させるように、背中をさすりながら言うと、少しだけ乃亜は顔をゆがめた。



でも、一瞬で笑顔に変えて、俺に言った。









「……ありがと、玲夜」







その声が、少しだけ悲しそうに感じたのは、気のせいだろうか?









「……ねえ、玲夜」




「ん?」




「――――あたしのこと、覚えてる?」



「は?」









おぼえ、てる?



どういう、ことだ……?







「……玲夜が、漣 玲夜じゃなければ、よかったのにな」



「どういうことだ……?」



「―――あたしたちが、普通の人間だったらよかったのにね」





あたし『たち』?



俺は、漣組の次期組長で、全国No.1の暴走族の総長だ。


だから、俺が普通の人間じゃないってことくらいわかっている。






でも、乃亜は……普通じゃないのか?






乃亜は、普通の人間だろ―――?