あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

「大っ嫌いな奴の夢」



「大っ嫌い……」








そう言う乃亜は、笑っていた。



でも、作り物みたいに完璧で、いつもの笑顔じゃなかった。



この2か月間、ずっと乃亜を見てきた。





異変くらい、すぐに分かる。











「そ。そいつがさあ、あたしに言ったんだ。今度は、お前の番だ、ってね」







今度は、お前の番……?






「……ねえ、玲夜」



「ん?」





「――――もしさ、大切な人を奪われたらどうする?」










え、と思い、乃亜の目を見る。






乃亜の目は――――光が宿っておらず、真っ黒だった。










「あたしなら、こうするよ」







そう言った瞬間。






乃亜が、俺の前から姿を消した。










「は?」














突然のことに動揺していると、耳元で声が聞こえた。










「――――そいつにとって、一番辛い方法で殺す」




「っ……」








ばっ、と後ろを振り向くと、冷たい表情をした乃亜が立っていた。





いつの間に……?








いつもと違う乃亜の雰囲気に、体が震える。



怖い、と、思ってしまう。








乃亜を見つめる。



すると、急に笑顔になって笑い出した。








「あっはは、なーんてね! 冗談だよ?」







さっきとは違って、明るい笑顔で言う乃亜。









でも、どう考えても、あれは冗談には見えなかった。















乃亜は、一体何を、抱えているんだろう。



俺じゃ計り切れないくらい、大きなもの。










深い、闇だ。












俺は、これからも今まで通り接することができるだろうか?




そう思ったとき、頭の中に乃亜の声が響いた。