あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

「―――――お前」




「は?」





お、お前……?



一番最初の頃を思い出す。






そういえば、なぜか。最初の頃、俺の事を嫌っていた。



そして、お前、と呼ばれることはたまにあったが……今では、ありえないことだ。







「……返せ。お前が全部やったんだろう?」



「何を、言って……」






いつもと完全に雰囲気が違う乃亜に、ゾッとした。



殺気が溢れ出ている。





――――こんな殺気、普通の人に出せるものじゃない。







―――これは、本当に乃亜、なのか……?










「あたしは……お前が、世界で一番……大っ嫌いだ」




「本当に、どうした……!?」






おかしい。



さっきから、乃亜の様子は完全におかしい。




泣いていた時も、普通とは違っていた。






「――――地獄に落ちろ」






……っ!?



一体、なにが……っ。







寝言? でも、寝ぼけて、意識があるようにしか、思えねえ……っ。





「っ、起きろ!! 乃亜!!」



「許さない……許さない……」



「いい加減に、目え覚ませ!!」







俺が乃亜の体を大きくゆすると、乃亜の動きがとまった。



そして、ゆっくりと目を開ける。









「……あれ? 玲夜?」









――――よかった。いつも通りの、乃亜だ。










「の、あ……」






安心して、肩の力が抜ける。






「えっ? どうしたの? すっごい疲れてない?」



「いや、大丈夫だ……」



「ふうん……あー、ちょっと嫌な夢見ちゃったなあ」






嫌な夢? さっきのことだろうか。


暴言の数々。強い殺気。





そんなに、憎い奴がいるんだろうか。








「嫌な夢って何だ?」





俺が思い切って聞くと、乃亜が、あー、と声を出した。