あなたに✗✗を捧ぐ。 ─少女は復讐相手に溺愛される─

「……ごめんね、三月」



『え? なにが?』



「あたし、嫌いだったはずなのに。好きになっちゃうなんて、バカだ」



『……』



「これも、みんなを裏切ってるのと同じだよね? ごめんね……」



『……一番白夜が大っ嫌いだった乃亜が、そこまで洗脳されるなんて。あいつら、どんな奴なんだろ』



「三月たちは、仲良くならない方がきっといいよ」



『そ? ま、嫌いだから仲良くなりてえとか思わないけどー』



「……好きになるのは、あたしだけでいい。復讐の心が鈍るのは、あたしだけでいいんだよ。みんなまで鈍ったら、それこそできなくなっちゃうじゃん」



『……そう、だよな』






そこで、シャワールームから物音が聞こえた。



うわ、玲夜が上がってくるかな!?



このこと、聞かれてたらまずい……!







「あ、ここで切るね! あたし、シェアハウスしてるからさ!」



『っ、はあ!? 誰とだよ!!』







耳元でものすごい大声が聞こえてきて、あたしは顔をしかめる。






「うるっさいってば! 玲夜と!!」



『れ、玲夜って総長だろ!? 呼び捨て!? ってか乃亜が男とシェアハウスとか……許せねえ……っ』



「な、なに言ってるの? まあ、切るから! またね! おやすみ!」



『ちょ、乃亜!! おやすみ……』






少し……いや、かなり不服そうな三月。


一方的に電話を切ってしまったことを、少しだけ申し訳なく思った。






でも……そっか。白夜は、怜をあんな風にしたんだもんね。




あたしは、いつも、絶対に片時も離さずに持っている『あるもの』を取り出した。







……シルバーの、三日月のピアス。




怜が、意識をなくす最後に、伝えてくれた。



白夜が、って。









「ねえ……あたしのやってること、間違ってないよね……? これで、合ってるんでしょ……?」








ぽつりとつぶやくと、少しだけ視界がぼやけた。



泣いたらダメ。あたしは、怜が倒れた日から、泣かないって決めてる。






あたしがグズグズしてどうする。





華皇のみんなに、心配かけるから。







はは、まるで、玲夜が言ってたみたいなこと言ってるなあ……。








『……一人で悩まなくても別にいいじゃん。仲間なら、信頼したらいい』








あの日、あたしが玲夜に言った言葉。




あの言葉が、ブーメランみたいにあたしの心に響く。







「はは……あたし、あんなこと言える立場じゃないじゃん……っ」





一人で抱え込めば、誰も心配しない。変に心配なんて、されたくない。



あたしが、しっかりしなきゃ……っ。





そう思っているのに、あたしの口からは、正反対の言葉が溢れた。