文化祭当日。

体育館の一角に設けられた展示スペースは、
まるで小さなお城の一室のように飾りつけられていた。

ピンクや白の布が天井から垂らされ、
紙で作った薔薇やリボンが壁を彩っている。


中央には、私が着るために用意されたシャーベットピンクのドレス。
昨日合わせた時よりも丁寧にアイロンがかけられ、
裾のフリルがふんわりと広がっていた。


 
「さ、準備できた? 姫様」
 
更衣室で声をかけてきたのは美咲先輩だった。
白シャツにベスト、黒いズボン
――まさに「王子様」そのものの衣装を身につけている。

髪も少しだけ固められ、普段より大人っぽく見えた。

「う、うまく笑えるかわかりません……」

「大丈夫。昨日も言ったでしょ? 
君は自然にしてるだけで、ちゃんと姫なんだから」
 
軽やかにウインクされて、また顔が熱くなった。

 
ドレスに袖を通すと、不思議と胸が落ち着いていった。
鏡に映る私は、昨日よりも少しだけ堂々として見える。

いや、気のせいかもしれない。
けれど、その「気のせい」が心を支えてくれる。