カメラのフラッシュに照らされて、視界がまぶしく揺れた。

「これ、もう文化祭ポスターに使えるよ!!」
デジカメをのぞき込んで撮れた画像を確認した写真部員が感嘆する。

 私は混乱の渦の中にいた。
やりたくないはずなのに、心のどこかで、胸がふわりと浮き上がるような感覚がしていたからだ。


 美咲先輩が近づき、私の手を取った。
「じゃあ決まり! あなたが姫で、私が王子様。ほら、ちょうどいいでしょ?」


 その笑顔は、わがままを押し通す子のものじゃなかった。
からかうように見えて、どこか誇らしげでもあった。
「私が王子やるから安心して。お姫様を守るのは任せて!」
と美咲先輩はウインクまでしてみせる。
 
パチパチパチパチッ…その一言に、周囲から大きな拍手が起こった。

私は両手を胸の前でぎゅっと握りしめる。

本当に、私が……お姫様役?

信じられない。信じたくない。だけど、鏡の中の自分が否応なしに告げている。

――ほら、あなたもなれるんだよ。憧れのお姫様に……。
 
胸が苦しいほどに高鳴っていた。