そのとき、カーテンの外から歓声があがった。

「わ、すっごい似合ってる!」
「ちょっと、こんなにハマると思わなかった」

 恐る恐る更衣室を出ると、クラスメイトたちが目を丸くして私を見つめていた。


 写真部の男子が慌ててカメラを構える。
「ちょ、ちょっとこっち向いて! 光、すごく合ってる!」
 カシャッ、とシャッター音が響く。
液晶画面に映し出されたのは、シャーベットピンクに包まれた、まるで童話から抜け出したみたいな少女の姿だった。

「……うそ」
 私は自分で自分を直視できず、思わず俯いた。その瞬間、前髪が頬にかかり、視線を伏せる仕草になった。

 写真部の男子が息を呑む。
「その顔! その仕草、めっちゃ姫っぽい……!」

「え、私……?」

「そう、それ! 守ってあげたくなる姫って感じ!」
照れながら写真部の男子が答えた。



「やっぱりね。私だとこのドレス、ちょっと子どもっぽく見えちゃうと思ったの。
けど君なら、すごく似合う。ほんとにお姫様みたいだよ」 
教室の隅で見ていた美咲先輩が、くすっと笑った。

 思いがけない言葉に、頬がますます熱くなる。

 先生まで「これは決まりだね」と頷いているのが見えた。

「ちょ、ちょっと待ってください! まだ私、やるって――」
 必死に抗議する私の声は、次のシャッター音にかき消される。