翌日。
学校へ向かっていた。どうも地面がジメジメした、空気もちょっと水を含んでいるような変な天気だ。水はいつでも含んでいるじゃ……みたいな突っ込みは無しで。
「おはよう!」
校門の前で亜美に会った。やっぱりいつもと変わらない。
「おはよう」
僕が言うと、僕の制服のポケットから、スマホを取り出した。
「ちゃんと、昨日の時計を部屋に置いた?」
「置いたよ~」
僕は亜美の手から、自分のスマホを取り返し、鏡アプリを起動させた。
「ほらっ リストの『白い時計』にチェックが付いているでしょ。今、家にいないから表示されないけど、置いてあるよ」
亜美は僕のスマホをじっと見た。
「うーん。よろしい」
やっぱり、いつもの亜美だ。
教室へ着くと、亜美がいったん出て行った。
「おはよう」
上石が話しかけてきた。
「おはよう」僕がそう言うと、
「高坂さんの様子はどうですか。何かわかりましたか?」
「いや、まだわからない」戸惑いながら僕は答えた。
上石がいったん下を向いて、何かを考えたようなそぶりをし、そしてこちらを見た。
「やっぱり、自分から直に言わないと」
「うん。そうだね。ありがとう」
そうだねとは言ったけど、直に言うとはひとことも言ってない。
……
どうも気持ちがギクシャクする。最初からメッセージで気持ちを伝えなければとも思った。
しかし、こちらがどう思っていても、時間は過ぎる。
今日の授業が始まった。
ギクシャクすると言いつつ、ちょっと日数が経っているので、授業もそれなりに集中できた。
最初の授業が終わると、上石が話しかけてきた。
「さっきの授業の、学習参考書、貸して。実はまだ用意できてないの。」
学習参考書、教科書の補助的なものだ。先生によってはあまり使わない。この教科の先生はあまり使わないので、上石も油断して用意が遅れたのだろう。
「はい。とりあえず明後日までは授業がないから、それまででね」
「わかった」
午後の授業も終わった。亜美は用事があるのか、さきに帰ってしまった。
昇降口を出ようとすると、土が湿ったような、なんだか嫌な、いやちょっと好きかもって感じの匂いがした。
「やはり降ってきたか」
そう独り言をつぶやいた。やはりと言っているが、傘は持ってない。
「傘はどうですか」
後ろから傘を差しだ女の子がいた。それは上石だった。
僕に傘の柄を握らせて、もう一つ持っていた別の傘を差して、先に行ってしまった。すぐに追いかけて、彼女と並んで歩いた。
「なぜ、傘を2本持っていたんだ?」僕はそう問いかけた。
「おかしい? 普段から置き傘をしているだけよ」
まあ、よく考えれば2本の傘を持っていてもおかしくないよね。3本とか4本だったらおかしいけど。
ふと彼女の傘のがらを見ると、虹色のグラデーションがかかった模様であった。僕が今、差している傘を見ると、濃い緑と淡い緑の市松模様のようだった。うーん。どこかで見たような。
そそくさと歩いている彼女がこちら見た。
「これからどうするの?」
「これからって?」僕が返答すると、
「気持ちの伝え方」
やっぱり、それのことだよね。
「明日、直に伝えてみるよ」
「そう」
この後はお互い無言だった。
途中で別れ、僕はよりみちもせずに家へ帰った。
条件反射で鏡アプリを立ち上げた。よし! ちゃんと亜美にもらった白い時計もあるな。いや、もらってないけど。
スマホにも時計表示があるけど、このアプリの中の置時計もちゃんと時間がわかるようになっている。
「今日は22日だな。明日、23日に気持ちを伝えよう」
おっとまた独り言を言ってしまった。
「23日がどうしたって?」
「えっ!」
僕はビックリしてしまった。独り言を聞かれたことを。亜美の不法侵入はいつものことだし、そっちはビックリしなかった。いや、やっぱり両方ビックリしたかも。
「あたしがあげた白い時計も置いてあるね。よし! 今日は22日。ちゃんと白い時計の表示も22日になっているね」
亜美が僕のスマホを見て、そう言った。
「うん。そうだね。白い時計が22日を表示しているね。そして明日は23日だ。スマホの時計とアプリの時計がリンクしていることを確かめただけだよ」
「そうなんだ。ゲームとかでも、作中に時計が出てくる場合があるけど、やっぱり実時間とリンクしていると、なんかうれしいよね」
ごまかせたようだ。良かった。
その後は、なにか、他愛のない話をして終わった。
明日だ。ただ気持ちを伝える。文字数にすると大した数でもないのだけど、考えるだけでもドキドキする。
夜になり、ベットに入った。
高揚感を覚えるような不思議な感じがする。まだ何も達成してないのに。寝付けなかったどうしよう。寝不足は嫌だな。
……
……
チュンチュン。
スズメが鳴いている。どうやらその後はちゃんと寝たようだ。寝不足でもないっぽい。よかった。
そして、朝食を食べ、家を出る。
空を見ると、今日もあまり天気が良くないっぽい。ただ、予報では雨は降らないらしい。僕はとりあえず、上石の傘を持っていった。返すつもりだけど、もしまた雨が降ったりしたら、再び借りてしまうかもしれない。
教室へ着くと、すでに亜美は席に着いていた。
「おはよう」
「おはよう!」
亜美はいつもと同じ様子だ。
しかし、亜美がいつもと同じ様子でも、僕は違う。何かしゃべろうと思っても、なかなか言葉が出ない。
その様子を見て、亜美は怪訝な顔をした。
キーンコーンカーンコーン
そこでチャイムが鳴り、ホームルームが始まり、そして授業が始まった。
……
下校の時刻になってしまった。ぼやぼやしているうちに亜美は帰ってしまった。
「伝えられなかったの?」
後ろから、上石が話しかけてきた。
「うん」
僕がそう言うと、学習参考書を差し出してきた。
「ありがとう。だいたいのところは読んだわ」
学習参考書をまだ用意できてないって言って、前に僕が貸したやつだ。
「じゃあ。また。今度は伝えられると良いね」
そう言って帰っていった。
その後、亜美に気持ちを伝えられない日が続いた。
学校へ向かっていた。どうも地面がジメジメした、空気もちょっと水を含んでいるような変な天気だ。水はいつでも含んでいるじゃ……みたいな突っ込みは無しで。
「おはよう!」
校門の前で亜美に会った。やっぱりいつもと変わらない。
「おはよう」
僕が言うと、僕の制服のポケットから、スマホを取り出した。
「ちゃんと、昨日の時計を部屋に置いた?」
「置いたよ~」
僕は亜美の手から、自分のスマホを取り返し、鏡アプリを起動させた。
「ほらっ リストの『白い時計』にチェックが付いているでしょ。今、家にいないから表示されないけど、置いてあるよ」
亜美は僕のスマホをじっと見た。
「うーん。よろしい」
やっぱり、いつもの亜美だ。
教室へ着くと、亜美がいったん出て行った。
「おはよう」
上石が話しかけてきた。
「おはよう」僕がそう言うと、
「高坂さんの様子はどうですか。何かわかりましたか?」
「いや、まだわからない」戸惑いながら僕は答えた。
上石がいったん下を向いて、何かを考えたようなそぶりをし、そしてこちらを見た。
「やっぱり、自分から直に言わないと」
「うん。そうだね。ありがとう」
そうだねとは言ったけど、直に言うとはひとことも言ってない。
……
どうも気持ちがギクシャクする。最初からメッセージで気持ちを伝えなければとも思った。
しかし、こちらがどう思っていても、時間は過ぎる。
今日の授業が始まった。
ギクシャクすると言いつつ、ちょっと日数が経っているので、授業もそれなりに集中できた。
最初の授業が終わると、上石が話しかけてきた。
「さっきの授業の、学習参考書、貸して。実はまだ用意できてないの。」
学習参考書、教科書の補助的なものだ。先生によってはあまり使わない。この教科の先生はあまり使わないので、上石も油断して用意が遅れたのだろう。
「はい。とりあえず明後日までは授業がないから、それまででね」
「わかった」
午後の授業も終わった。亜美は用事があるのか、さきに帰ってしまった。
昇降口を出ようとすると、土が湿ったような、なんだか嫌な、いやちょっと好きかもって感じの匂いがした。
「やはり降ってきたか」
そう独り言をつぶやいた。やはりと言っているが、傘は持ってない。
「傘はどうですか」
後ろから傘を差しだ女の子がいた。それは上石だった。
僕に傘の柄を握らせて、もう一つ持っていた別の傘を差して、先に行ってしまった。すぐに追いかけて、彼女と並んで歩いた。
「なぜ、傘を2本持っていたんだ?」僕はそう問いかけた。
「おかしい? 普段から置き傘をしているだけよ」
まあ、よく考えれば2本の傘を持っていてもおかしくないよね。3本とか4本だったらおかしいけど。
ふと彼女の傘のがらを見ると、虹色のグラデーションがかかった模様であった。僕が今、差している傘を見ると、濃い緑と淡い緑の市松模様のようだった。うーん。どこかで見たような。
そそくさと歩いている彼女がこちら見た。
「これからどうするの?」
「これからって?」僕が返答すると、
「気持ちの伝え方」
やっぱり、それのことだよね。
「明日、直に伝えてみるよ」
「そう」
この後はお互い無言だった。
途中で別れ、僕はよりみちもせずに家へ帰った。
条件反射で鏡アプリを立ち上げた。よし! ちゃんと亜美にもらった白い時計もあるな。いや、もらってないけど。
スマホにも時計表示があるけど、このアプリの中の置時計もちゃんと時間がわかるようになっている。
「今日は22日だな。明日、23日に気持ちを伝えよう」
おっとまた独り言を言ってしまった。
「23日がどうしたって?」
「えっ!」
僕はビックリしてしまった。独り言を聞かれたことを。亜美の不法侵入はいつものことだし、そっちはビックリしなかった。いや、やっぱり両方ビックリしたかも。
「あたしがあげた白い時計も置いてあるね。よし! 今日は22日。ちゃんと白い時計の表示も22日になっているね」
亜美が僕のスマホを見て、そう言った。
「うん。そうだね。白い時計が22日を表示しているね。そして明日は23日だ。スマホの時計とアプリの時計がリンクしていることを確かめただけだよ」
「そうなんだ。ゲームとかでも、作中に時計が出てくる場合があるけど、やっぱり実時間とリンクしていると、なんかうれしいよね」
ごまかせたようだ。良かった。
その後は、なにか、他愛のない話をして終わった。
明日だ。ただ気持ちを伝える。文字数にすると大した数でもないのだけど、考えるだけでもドキドキする。
夜になり、ベットに入った。
高揚感を覚えるような不思議な感じがする。まだ何も達成してないのに。寝付けなかったどうしよう。寝不足は嫌だな。
……
……
チュンチュン。
スズメが鳴いている。どうやらその後はちゃんと寝たようだ。寝不足でもないっぽい。よかった。
そして、朝食を食べ、家を出る。
空を見ると、今日もあまり天気が良くないっぽい。ただ、予報では雨は降らないらしい。僕はとりあえず、上石の傘を持っていった。返すつもりだけど、もしまた雨が降ったりしたら、再び借りてしまうかもしれない。
教室へ着くと、すでに亜美は席に着いていた。
「おはよう」
「おはよう!」
亜美はいつもと同じ様子だ。
しかし、亜美がいつもと同じ様子でも、僕は違う。何かしゃべろうと思っても、なかなか言葉が出ない。
その様子を見て、亜美は怪訝な顔をした。
キーンコーンカーンコーン
そこでチャイムが鳴り、ホームルームが始まり、そして授業が始まった。
……
下校の時刻になってしまった。ぼやぼやしているうちに亜美は帰ってしまった。
「伝えられなかったの?」
後ろから、上石が話しかけてきた。
「うん」
僕がそう言うと、学習参考書を差し出してきた。
「ありがとう。だいたいのところは読んだわ」
学習参考書をまだ用意できてないって言って、前に僕が貸したやつだ。
「じゃあ。また。今度は伝えられると良いね」
そう言って帰っていった。
その後、亜美に気持ちを伝えられない日が続いた。



